【いろいろtv_#50】八百屋歴まもなく20年 / 野菜仲卸業の裏話を教えてください!

いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社 代表の青木が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。

第50回目は、ゲストにマルタ青果の中川健司さんをお迎えして、野菜仲卸業の裏話など、いろいろおはなしをお聞きしました!

目次

社会科見学ぶりに知る「 市場のお仕事 」

中川さん、本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いいたします。

中川さんは昔の会社が一緒だったのでよく存じ上げているんですが、視聴者の皆さまに向けて、最初に自己紹介をお願いします。

いろいろの青木さんとアクセンチュア時代の同期の中川です。

2000年にアクセンチュアに入社し、10年ほど勤めたあと、東京の築地市場というところで1年ほど働き、その後、家業であるマルタ青果という、京都で野菜を取り扱っている仲卸の会社に入社いたしまして、それから約20年近くこの仕事に従事しております。

ありがとうございます。もうめちゃめちゃ緊張している感が面白いです(笑)。
野菜の仲卸業って具体的にどういうことをされているんですか?

野菜を売っているというのが一番簡単な説明なんですが、普通にコンシューマーに向けて売っているのではなくて、八百屋さんだとか、レストランだとか、野菜を使った何かしらの加工をされている事業者さん向けに販売しています。

皆さんが買われている野菜を取り扱っている八百屋さんなどに比べると、その一つ前の段階の取り扱いをやっております。

仕入れの流れで説明すると、野菜は農家さんから農協に行き、その後に大きな単位で取りまとめている会社である大卸(おおおろし)さんがあり、そこから我々は仕入れて八百屋さんなどに販売させてもらってます。

青果市場の中でお仕事をされているということなんですか?

はい、そうです。

僕、青果市場は多分小学校の見学以来行ってないので、イメージがつきづらいのですが、いろいろな生産場所から青果市場に野菜が集まって来るんですかね?

そうです。全国から来ます。

「世界から来ます」と言った方がいいかもしれないです。

青果市場はいろんなところにあるんですかね?

福岡もありますし、熊本にも長崎にも佐賀にもあるという感じですね。

都道府県に一個みたいなイメージですか?

だいたいあります。

ただ、その取り扱い高によって中央市場と名乗っていたり、ただの青果市場だったりという違いはあります。

そこに全国、世界から野菜や果物が来て、そこで中川さんが野菜を買い付けているんですか?

朝のセリで野菜を買って、朝来られたお客さんに販売したりだとかしています。

多種多様なんですけど、前の日から準備をしていますね。

大きいスーパーさんなど向けは、朝一番に荷物が出て行くので、朝の5時や6時にはもう荷物が市場から出て行きます。開店時刻である9時頃までに荷物が届くように出荷しています。

買い付ける野菜は予測できるものなんですか?青果市場に集まってきてから買うので、そこに集まってくるまでは何がどれぐらい来るとかはわからないということでしょうか?

ある程度はわかります。

産地と呼ばれるところから「荷物がこれぐらい出ますよ」という案内があります。それを我々が仕入れさせていただいている大卸さんがコントロールしてくれるといったイメージです。

ざっくり言うと、大卸さんは集荷するのが仕事で、我々仲卸は販売するのが仕事と、市場の中ではそういう分け方になっています。

大卸さんが、京都の市場に来るものをいろんなところから仕入れてきて、そこから仲卸の方々が八百屋さんや飲食店さんに販売されているということなんですね。

そうですね。

ここまでのお話でも、知らないことがたくさんあって、とてもおもしろいです(笑)どれぐらいの野菜が入ってくるかは大卸の方から情報が来て、その情報をもとにどれぐらい仕入れるかを考えられているわけですね。
仕入れの計画をたてるための情報などがわかるのは前日ですか?

前日の夕方ぐらいにはある程度わかる感じですね。

リアルタイムというか、毎日状況が変わるってことですよね?

毎日変わります。昨日あったものが今日はないということはよくある話です。

商品を購入されている消費者の方々はそこまでわからないと思うんですけど、急に値段が高くなったというものがあったりするのは、そういう理由です。

前日の夕方とか夜にわかるということは、買い付けるときには次の日どれぐらい来るかは分からないってことなんですよね。

実際はそうですけど、ある程度前もって依頼を受けている分に関しては、前もって集めていったりとか、そういう動きはします。

それは仕入れてもらうってことなんですか?

仕入れてもらうのと、自分たちで例えば100ケースをお渡しするという約束をしているんだったら、それに合わせて荷物を回転させて集めていくと。

本当に日々変わっていく品目に対し、経験や情報などを駆使してニーズに合わせた買付をしていくということですよね。

そうですね。

すごいアナログな世界なんで、データなんて通用するのかというところはあるんですけど、みんなそういう風にやっています、今のところは。

もうすぐ20年の中川さんの経験だと、「出荷がこういうタイミングで減りそうだから早めに商品を集めなきゃ」とか考えられているってことなんですか?

そうですね。

野菜の良し悪しというところもありますが、今の段階だとそういうふうに集めていってます。ある程度経験をしていくと、この時期は荷物が多くなるということもわかります。

当たり前の話ではありますが、雨が降った翌日には荷物が減るということもあります。そういう情報はリアルタイムに絡んできます。

それと、品物にも特徴があります。

例えば、今の季節だともうすぐタケノコが最盛期になってくるんですけど、今までは雨が少なかったので入荷自体の量がかなり少なかったんです。

これからちょっとずつ雨が降り出してくるんで、おそらく今後1ヶ月ぐらいの間ではかなりの荷物があふれてくるような感じになり、タケノコの相場は下がってくるという流れがあります。

なるほど。確かにこれぐらいの時期からですよね、タケノコご飯がお店で食べれたりするのも。

天気だけではなく、積み重なってきた積算の気温も重要なんです。

積算気温という概念があって、寒い時期が長いと芽が出てくるのが遅いんですが、暖かい時期が続くと出てくるのが早い。通算で何度以上積み重なっていくと芽が出てきたり、花が開いたり、といった変化が起きます。

梅や桜が咲くというのもそういった事情なんです。積算気温によって出荷量、出てくる量は変わったりするので確認していますね。

積算気温というのはどうやって管理していくものなんですか?

僕らは管理はしてないです。

産地の方々はそれを測って、実際の情報をJAさんが共有している部分もあります。資料として「積算気温は何度でした、だから今年の開花はちょっと早いんで出荷も前倒しになりますよ」とか、そういう案内があったりします。

なるほど。何も考えずにスーパーで「ないな」とか「高いな」とか思っているぐらいですが、品揃えの裏ではそういった事情が絡んでくるわけですね。

一般消費者の方はそれが普通だと思いますよ。

僕らはそれを感じさせないようにやっていくのが仕事なので、ただ何事もないようにお客さんが買っていかれるというのが一番だと思います。

仲卸としての経験や、仕事の仕方

中川さんは何種類ぐらいの野菜を扱っているのですか?

大枠のトマト、キュウリ、ピーマン、キャベツ、レタスとかそういう品目で言うと、おそらくそこまで多くはないのかな。

でも、200種類以上はあると思います。

そこに品種とかサイズ、等級が入るってことですよね。

はい。だから、かなり細かくなります。

それに、「野菜」という取り扱いの中には、野菜だと思われていないものもあったりするので、それを一つの品目としてカウントするのであれば、もっと数は増えます。

すごい量ですね。だんだん覚えていくものなんですか?

そうですね。最初は全然わからなかったです。

中学生ぐらいから家業は手伝っていたんですけど、実際仕事としてやり出したのはアクセンチュアを退職してからです。

いろいろな品目があるというのは、最初の築地の市場での仕事である程度覚えて、あとはちょっとずつ身についていくという感じでした。

体系的に学ぶというものではないのですね。

本当はそういうものがあった方がいいと思うんですけど、なんせ小さい会社なんで、OJT的に仕事をやりながら学んでいくという感じですね。

もうすぐ経験20年ということですが、もっと大ベテランの方々も会社や同業者にいらっしゃいますよね。その方たちは知識量が違うものなのですか?知っている野菜の数とか。

知識量はそんなに変わらないと思います。ただ変わるのは、勘というか、相場の上げ下げというような、そのあたりの感覚とか。

あとは季節ですね。

「この季節、これぐらいになったらこれを多く買って売っていく」という戦略というか、明確なビジョンを持っている人はいるんですよ。そういう部分はベテランが強いなというのはあります。

それを横で見ていて、真似していくんですか?

そうですね。模倣はやっていいと思うので。

仕事はやっぱり模倣からスタートするのが多いと思うんですよね。

ゼロからスタートする面白さもあるんですけど、いい見本があるとそれを真似していくというのも当然だと思います。

仲卸と呼ばれる同業の方って、例えば京都だと何社ぐらいいらっしゃるんですか?

野菜でだいたい30軒ぐらいですかね。

果物で20軒ちょっとぐらいだったかな。

野菜と果物で分かれているんですね。

そうです。

仲卸という点では、大きく言うと魚もありますし、塩干(えんかん)と呼ばれる干物を扱っているところもありますし、お肉屋さんもそういう仲卸の業者がいらっしゃいます。

市場の中にはそういう業者がたくさん集まってるというイメージです。

仲卸同士は競合関係にあるわけですよね。仕入れたものをスーパーや飲食店さんに販売していく上で、どんどん開拓していくみたいな競争なんですか?

開拓していくというのもありますし、既存のお客さんを大事にしていく中で、新しいお客さんが来られることもあるという感じです。

ただ、基本的には今売っているお客さんを大事にするということが基本路線だと思います。

お客さんが飲食店さんの場合は、作りたいメニューがあるので「こういうものが欲しい」とか、そういうリクエストが来るんですか?

そうですね。前日にある程度決めていらっしゃるんですけど、在庫が足りないものを発注してくるという感じになるんで。

絶対いるという時は、前もって予約が入っているから必ずこれぐらいは用意してほしいと言われる時はあります。

なるほど。お客さんが八百屋さんの場合は、八百屋さんが売れそうな予想をしてから発注が来るみたいな感じなんですか?

八百屋さんも動き的には我々と似たような動きをされることが多いので。店頭で売っていらっしゃるお客さんもいらっしゃいますし、それとは別に、仲卸と同じように近所の飲食店とかに売りに行ってらっしゃる方もいらっしゃいます。

だから、お客さんは、そのお客さんから発注されて、またそれを仲卸に発注を流していただくという流れもあります。

市場は朝早いというイメージがありますが、1日の流れを教えてください。

朝というか、会社自体は午前0時(夜中12時)には開いていますね。

全員ではないですが、早く動く方がいて、そのあと、みんなが3時や4時から動き出します。お昼までにはある程度の業務は終わります。

営業は、お昼からは次の日の準備をしていきます。

大卸さんに発注をかけたり、お客さんから注文をもらっている次の日分の集計をして段取りをする業務などですね。

ある程度分業されている、ということなんですね。

野菜の目利きと、値段

量を確保することもですが、野菜の質や美味しさを見分けないといけないんですよね?

見分けないといけないですね。値段ばっかり追いかけるわけにもいきません。

例えば、同じようなトマトでも、見た目はすごくきれいなのに美味しくないトマトを作っている産地とかもあります。そういうのは値段にあらわれます。

よく、お尻のところに星が出ているトマトが美味しいとか言うじゃないですか。水分が均等にいっている目安になるので、美味しいものだという見分け方ではあるんですけど、見た目がそう見えていても美味しくない品種もあったりします。

ピーマンの場合は、木が古くなってくるとか弱くなってくると、やたらと硬いピーマンになるんです。食べた時に皮が突っ張る。

その代わり、これからの季節に出てくる新しい木のピーマンは、皮が薄くて柔らかくて食べると味が濃くて美味しいんですよ。

硬いピーマンは食べた時に舌触りが悪いので、カチカチのピーマンより、柔らかいピーマンの方が味は絶対美味しいです。

それは、どこの産地にもありうる話で、終わりがけのタイミングの産地がどこ、これから出荷が始まる産地がどこ、というのはある程度頭の中に入っています。食味は値段に影響します。本当に倍ぐらい金額が違う時もあります。

新しいピーマンはシワっぽいんですよ。最初はハリがあるんですけど、ちょっと置いておくと水分が飛んでシワっぽくなる。見た目がちょっとクタッとする。

買うときに触ってチェックするってことですか?

触ってチェックもしますし、目で見てチェックもします。

一番最初は目で見ます。どう見ても悪いだろうというのをまず除外して、その後は触ってみます。硬いと食味がよくないのでそれは買わないとか。

他の品目にしても、触ってみて柔らかい・硬いというのがわかるんで、そういうところは自分たちで判断する材料の一つになります。

それも経験で覚えていくんですか?

そうですね。

毎日触っていると「良くない」というのはなんとなく分かってくる感覚もありますけど、人に教えてもらうこともあります。

最初は自分で判断するのは難しいので、人に教えられてやっていき、自分で覚える。その後、自分の経験が糧となって、人は避けるけど実はお勧めできる商品があれば、それをお客さまに勧めていくことができるようになります。

これは経験ですね。

ピーマンやトマト以外の野菜にも見分け方があるってことですよね?

いっぱいあります。

きゅうりだと先っぽを見る。押してみる。とかですね。

先の方を見たら膨らんでいるきゅうりがあるんで、それは僕らの言い方だと「ひねてる」といいます。時間が経っているきゅうりは、先端がぷくって膨らんでくるんですよ。市場によってはコブラって言ったりします。仲卸はみんな分かっているんで、そういうきゅうりは避けたりしますね。

キャベツや白菜は「巻き」を見る。

よく巻いてるやつの方が味が締まっているというか。

見分け方は野菜それぞれによって違いますけど。柔らかくないとダメなやつもありますし、逆に柔らかいとダメなやつもありますし。

見分けたあとに余っちゃうものってどうなるんですか?
売り先のお客さんによっては買うということもあるんでしょうけど、それでも余ってしまうのではないかと思いまして。余っていく野菜たちの末路が気になります。

値段です。

そういうものは値段が下がってくるんで、それを安売り専門の業者さんとかが買っていったりだとかします。

すごい安い八百屋さんとかスーパーとかがたまにありますが、そういうカラクリなんですね。

スーパーだと値段と物、両方を求める方が多いんで一概にそうとも言えないんですけど、そういうふうに選ばれているというのは多いと思います。

目利きしたものが、箱単位でスーパーや八百屋さんに入ってくると、だいたい同品質で来るわけじゃないですか。そうすると、一般消費者の人たちがスーパーの野菜売り場で見比べる意味ってないんじゃないかって思ったのですが、そのあたりはどうですか?

僕はそう思ってます。

箱に生産者の名前が書いてあることが多いですよね。

JA(農協)を通すというのは、品質の均一化を図っているという意味もあるんですよ。農協さんは自分たちの商品に対して規格表みたいなのを持っているので、大きさ、重さ、長さ、そういったものを全部ある程度の基準を持っているんです。だからJAさんが出してくる商品はある程度安定しています。

出してくるものの中には「個選」と呼ばれる個人の名前で出しているものと、「選果場」というところに荷物が集まって選果機や人の手を使って商品が混ざって出荷されるパターンとがあります。農業生産法人など、基準がないところが出している商品は、品質が同じだとしても大きかったり小さかったり規格がバラバラだったりもします。

農協は基準があるから揃っている。そういうところが、最終的な商品の値段とかに関わってきます。消費者の方が選ばれる気持ちはすごくわかりますし、箱によって違う場合もあるんですけど、正直に言うと、農協を通しているものは実はあんまり変わらないのです。

そうすると、仲卸の方の縄張りみたいなものがあって、品質が落ち始めているものを買うのが強い方とか、高級レストランに卸すのがメインの方とか、そういう縄張りで成り立ってたりするわけですよね。

まさにそのとおりですね。

最終的に買うお客さんがそれぞれ変わってくるんで、その辺のリクエストによって仲卸も動きを変えるという感じです。

安いものをメインで売ってらっしゃる小売店でも「良い商品をちょっと置いておきたい」という時はいい商品をお願いしますという場合もありますし。

仲卸はなるべくお客さんのニーズに応えられるように商品を選んでいく、という感じですね。

例えば、京都市内で、ここの八百屋さんはここから仕入れられているからとか、業界の人から見たらわかっちゃうものなんですか?

わかります。

どの辺のランクを置いてらっしゃるかで判断できたりします。いくら良い商品を置いていても、どっかでちょっと時間を置いてるなっていう商品が安く売られていたりだとか。

見た目がみずみずしくていい商品でも「これはちょっと訳ありだな」というのもわかったりはします。

中川さんが自宅用に野菜を買うときは、やっぱり自分たちで目利きをするという感じなんですか?

全てがそうではないですね。

そこまで大きなこだわりがあるわけじゃないですけど、そのまま食べる「食味」に関するものについては、ある程度いいなって思うものを買ったりはします。トマトもそうですし、いちごだとか、熱を加えるわけでもない商品はなるべくいいものを買いたいというのはあります。

熱を通すものは、産地さんによって違うものもありますが、そこまで大きな差はないかなと思います。直接食べるものに関してはやっぱり敏感になりますね。

果物は専門ではないので、果物については、果物専門の仲卸さんがいらっしゃるんで、美味しいやつをお願いしたりもします。

餅は餅屋じゃないですけど、ちゃんと美味しいものをみんなわかってやってらっしゃるんで、そこはもう果物のプロに僕らも丸投げします。この時期によってこのイチゴが美味しいとかそういうのがあるんで。

極端な話、選んでもらったものを食べたら、今まで食べてたものと全く違うということは結構あるものなんですか?

多分あると思います。

トマトや、いちごなどの果物全般は特にそうでしょうね。味付けも何もしない、そのまま食べる商品は味の差が出やすいんで。

そういったものはデパートでもだいぶ値段が高かったりしますよね。価格が味にものすごく影響します。

なるほど。
そういえば、僕は昔トマトが嫌いだったんですけど、10年ぐらい前に、妻が良いトマトを買ってくれたことがきっかけで生のトマトが食べれるようになりました。同じトマトでもこんなに違うんだというのは僕にとって大きな発見になったんです。
野菜だとトマトとかキュウリとか、生で食べるものが味の違いを感じやすいですか?

そうですね。

糖度とか水分量とか、それによって舌触りとか含めた食味がすべて変わってくるんで。トマトは特に食味が出やすいので、好き嫌いが分かりやすく出る商品だと思います。

栽培方法というのも10〜20年前から比べて変わってきていて。植物全般を育てるのに水をたくさん与えるのがいいと昔から言われてきたと思うんですけど、トマトとかは最近は逆で水を与えるとただただ水っぽくなる。水を少なめに育てると味が締まる、濃くなる。そういう育て方をされているところが多いです。

でもそれは昔の人からすると、昔のトマトじゃないんですよね。昔の人は水気の多いトマトが好きだったりするんですよ。最近の人は甘いのが好きだったり。

トマトだけじゃなくて、さつまいもとかも、昔はホクホクして美味しいと言われてきましたが、最近はちょっとベトッとした安納芋に代表されるしっとり系のさつまいもに、お株を奪われてきているというか。

やっぱり時代とともに流行り廃りや人のニーズ・好みは変わってきているので、一概にこれがいいというものではないと思います。昔ながらのがいいという人もいると思いますし。

さつまいもについて聞いてみたいんですが、明日、僕が妻に自慢できるような知識って何かあるんですか?

もう最近の流行りというか、確実にこれ甘いよというのは「紅はるか」ですよね。

「紅はるか」もいろいろな名前があって、大分県産だと「甘太くん」とかですね。あれは「紅はるか」の代表例です。他にも、茨城県など、いろんな産地で作っています。

この時期になると「長期熟成」と呼ばれるものが出てきます。

根菜類は大概そうなんですけど、すごく冷えたところで長期で貯蔵するとデンプンが糖に変わって甘くなるんですよ。バレイショだとか、雪の下で保存してた「雪下人参」が甘いというのとかもそういう理由ですね。

長期的に熟成させ、冷やしておくとデンプン質が糖に変わって甘いさつまいもができあがるという。昔から、氷室とか木の下に野菜を埋めておいて、しばらく経ってから食べると美味しくなるということが知られていますよね。それが最近、人の手によってやり出されているという感じです。

産地リレーと気候変動、八百屋として考える未来

流行りじゃないですけど、新しい品種や特徴を持った野菜が出てきて市場に流通しだすことがあるんですね。

そうですね。さつまいもは、10年前はここまで市場規模が大きくなるとは思ってなかったです。

取り扱いも多くなりますし、流通量も増えましたし、焼き芋屋さんも増えました。

昔はさつまいもは本当に旬の時期だけだったんですよ。最近は品種改良とかが進んで夏場でも美味しいさつまいもが出てきたりとかして。僕らの業界では「産地リレー」って言うんですけど、1年間通して一つの単一野菜を供給するサイクルを作るというのがあるんですけど、さつまいもも、もうそれに入りつつありますね。

一年中食べられるようになってますね。

はい。出荷できる時期を日本の中でつないでいくんですよ。

産地が南から始まって北に移っていって、それがまた南へ戻ってくるという。

産地リレーの有名なものはタマネギですよね。

そうですね。今だと新玉の季節なんで、今だと兵庫県ぐらいまで新玉が来ていて、それがずっと上に上がっていくんですよ。

北海道のタマネギに到達して、越冬したら今度南へまた戻ってくるという。

たまにこのリレーがうまくいかなくて、1ヶ月空いちゃったりすると値段がすごく高くなっちゃったりするってことですね。

そうです。あらゆる品目で、冬から夏への切り替わりなどで、野菜の出てくる時期がバッティングするタイミングというのがあるんですよ。

今年はそれがおそらくこの先1ヶ月程度続く予想です。だから、3月の後半から4月、5月ぐらいにかけては値段が下がってくる品目が多くなるという予想をしてます。

供給量が全体的に増えるから、ということですね。

そうです。タイミングがずれると相場が大きく変わるんです。

時期が空いちゃうタイミングが出てくると、供給のバランスが崩れて品物が全然なくなるので値段がドーンって上がる。よくテレビで報道されるのはこういう状況のときですね。

野菜が出てくる時期が重なるタイミングのことはテレビでやっていない印象があります。

重なるタイミングのときは市場のニュースではなくて、「出てくる前に産地で廃棄しました」というニュースとして出ます。キャベツのニュースとか。

運んでも全然お金にならないからそこで捨てちゃうというようなことですか?

そうです。物流コストを考えると運ぶ金額と販売する金額が見合ってこないんですよね。

産地にとっては、廃棄してしまった方が利益になるのでその場で捨てちゃう。それが問題だとされていたりもしますね。

でも、トラックを1台走らせるのにも、もちろん物流コストがかかります。2024年の物流の問題が出てからは、さらにコストが上がってきている状況なんで、産地さんの希望の値段が提示されないと、おそらく産地で廃棄するというのは増えてくるんじゃないかなと。

物流コストが上がってからは、産地の人も出すところを決めて出荷しています。例えば「大消費地」と呼ばれる東京とか大阪とか、ある程度出す市場を集約して出している場合もあります。「欲しいところはそこからもらってください」というスタイルに変わりつつあるような感じもします。

一旦集約することでコストを下げるってことですね。

いろんな問題が関わってきている業界なのかなとは思います。。

想像以上に知らないことがたくさんあるんだなって思いました。

なかなか皆さんが見られないところですね。

自然のものなんで、天候によって大きく左右されるというのが一番です。味の良し悪しもそこに関わってくるんで、「今年の出来がいい」というのは、その時の雨の量が多かったから水が回って出来が良くなったんだとか。基本はそういうところだと僕は思ってます。

品種改良とかいろんな努力で美味しいものが食べられますが、気候はコントロールできないのでそれで変わっていくってことですね。

特にここ何年か酷暑になっているんで、それによって商品の出方がコロッと変わっているんですよ。

毎年この時期こういうものが出てきますよっていうのがあると思うんです。タケノコが終わって山椒が出てきて、次は梅が出てきて、6月だと梅干しの季節だ〜とか。

肌感ですけど、そういったことが、おそらく2週間ぐらい早まっているんですよね。10年ぐらい前に比べて全部が早くなってるんです。夏場もそうですけど、全体的な平均気温が上がっているというのが影響しているのかなと。

なるほど。気候変動も影響するわけですね。
最後に中川さん、今後この仲卸というお仕事でどういうことを考えられているか聞かせていただきたいなと。

僕らの業種って、利益率という仕事をしていく上でかなり重要な部分がかなり薄い商売になっていて。

薄い理由の一つはナマモノなので「廃棄」という部分が多い商品という特性だと思ってます。1週間、2週間持つかと言われたら、そうではないものも多いです。今日買って今日売らないとダメという商品もあります。そういう商品を捨てるのを避けたいです。

商売上、マイナス計上しているものがプラスに変わるような動きをしていきたいので、巷で言う食品ロスを減らしていくような動きというか仕事を自分で作っていきたいなとは思ってます。

本日はありがとうございました。

〜第50回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜

中川さんに野菜と仲卸というお仕事について、いろいろお聞きした1時間でした。

僕がスーパーなどで買っている野菜が、どんな流れでそこにたどり着いているかを知ることができて、とても勉強になった時間でした!

中川さんの話を聞いていて、仕事での勘がどのような経験に基いてできているかを言語化されていて、とても興味深かったです。
そして、社会人になる直前の学生時代に出会った友人が、違った仕事でプロフェッショナルとして活躍していることを感じる新鮮な時間でした😁

中川さんの話を聞いてから、スーパーでの買い物の時に野菜を選ぶ時間が短くなった気がします😁