いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社 代表の青木が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。
第30回目は、ゲストに株式会社アンテ代表取締役の島田和子さんをお迎えして、アンテの事業、エンゲージメント、研修に対する想いなど、いろいろおはなしをお聞きしました!
目次
エンゲージメント=恋愛・婚約
本日はよろしくお願いいたします。
島田和子と申しまして、株式会社アンテの代表取締役を務め、組織とキャリアのコンサルティングをしています。
活動のテーマとしては「エンゲージメント」というキーワードを置いておりまして、企業と従業員が互いの成長に貢献し合う関係性を高めるサポートを通じて離職の問題や頭打ちになってしまった業績、企業風土の変更などを外側から支援しています。
資格としてはキャリアコンサルティングの技能士と、コーチングの学びの資格と、大野城市の男女共同参画関係の取り組みにも力を入れており、福岡県男女共同参画センター「あすばる」で半年間の女性リーダー育成プログラムに関わらせていただいたりしています。
今日ご覧になっている方の中には詳しい方もいらっしゃるかもしれませんが、エンゲージメントの概念をまずはお伝えします。
婚約指輪のことをエンゲージメントリングと言いますが、約束という意味があります。
組織と従業員のみなさんが対等な関係でお互いの成長に貢献したいと想い合えている関係を指します。エンゲージメントが高い状態は恋愛関係や夫婦関係で言うと両想いな状態であり、日々前向きな気持ちで働けていて、結果として生産性や顧客満足度が上がり、ミスや離職が減ってくることが証明されています。私は、エンゲージメントが低い状態から高くしたり、比較的高い状態から更に高くしたりといった支援をしています。
本格的にエンゲージメントに入り込んだのは4年くらい前です。そのときにエンゲージメントに関するいろんな書籍を読んだり、セミナーを受けたりしました。エンゲージメントリングの例えがわかりやすいなと感じたことがあり、その表現を使わせてもらい始めました。エンゲージメントを何と例えたら良いんだろう、と考えたときに、婚約関係、恋愛関係、夫婦関係などがしっくりきて、この表現になりました。
エンゲージメントはロイヤリティやモチベーションと混同されがちな言葉なので、違いがわかった、両方からベクトルがあるんだね、という真面目な反応の方もいれば、夫婦関係がモヤッとする方は苦笑いされていることもありますね(笑)
株式会社アンテ創業のきっかけ
もともとは全く別の仕事をしていました。福岡県庁の農業職です。想いをもって就いた職業だったのですが、そのなかで、エンゲージメントが高い状態で働けなくなったということがありました。当時はエンゲージメントという言葉は知らなかったので、コミットしたはずの仕事からだんだん気持ちが離れていってしまうことなどを感じつつ、これって自分のせいなんだろうな、と思っていました。でもそれがどうにもできず、結果的に退職をしました。
そこから、個人向けにキャリアコンサルティングなど、自分のようにキャリアにモヤモヤしている方の支援をするようになりました。しかし、この人が変わっても組織が変わらないと根本解決にはならないよね、という想いを持つようになり、法人向けになにかやりたいと模索するようになりました。
その中で、一番ドンピシャだったのがエンゲージメントという概念でした。
そうですね。県職員としてドン底だった時期は、農産物を輸出する事業に関わらせてもらっていた時です。福岡県は先進的な取り組みをしていたのですが、農家さんの所得につながるほどは売れず、農家さんを貿易上のトラブルに巻き込んでしまうこともあって、いったいこの仕事が誰の役に立っているのだろうと、ここではお役に立てないかもしれない、と思ったときに、何がやりたくて何ならできるんだっけ、と悩んでしまいました。
そんなときに、自分探しのためにコーチングの講座を受けたところ、悩みがスッキリ晴れました。師匠との出会いもあり、私もこんな仕事ができたらいいな、と思うようになりました。
最初は個人向けのキャリアコンサルティングが軸でしたが、私の関心が組織に向き始めたので、組織開発を手掛けられてきた先輩方との出会いがあり、サポートしていただきながら、法人向けのサービス開発をして、自社も法人化した、という流れです。
当初は、研修をするくらいしか頭になかったのですが、組織開発を学ぶ中で組織の診断が重要だと思うようになりました。当時もエンゲージメントサーベイが様々あり、大きいところですとモチベーションクラウドさんや、Wevoxさんも知名度を上げてきていた時期でした。あのような診断を自社でも持ちたいというところがあって、サーベイの開発から始めました。
最初のクライアントは、ある組織サーベイを導入したけどなかなか活用できないから、その活用を手伝ってくれないか、というところからお話をいただき、人材育成までお話が広がりました。
未だに自信がないところなのですが、長く人事系の仕事をしてきました、と言えたらどんなに良いだろうかと思うことはあります。前のキャリアとのつながりがどうあるんだ、と聞かれると言葉につまることもあります。
あのときの自分のようにモヤモヤし、ドン底にいる方がいるのであれば助けてあげたいという気持ちもありますし、その一方で経営者の方も悩んでいますので、その力にもなりたいです。みんながいきいきと働いていて、成果が出ている状態だと良いなと思って働いています。スキルについては、必要に迫られてどうにかしている、という感じですね(笑)
経営者の悩みとやりとり
ある会社の事例をお話します。
社員さんは50人くらいの規模のIT企業だったのですが、社長さんの課題感としては、自社が全く自走型ではないという組織であり、もっと自発的にボトムアップでアイディアを出すような組織にしたい、という思いがありました。一方で、従業員としては上から何も降りてこない、という不満が出ていました。初代の社長さんがカリスマ的な存在であったということもあり、従業員がトップダウンに慣れていたという背景がありました。
社長の交代とともに、みんなの意見を取り入れながら進んでいきたいという方針に変えたいという状態でしたが、みんなとやりたいので自走してほしいという気持ちと、上からミッション、ビジョン、具体の戦略をおろしてほしいという気持ちの対立構造になっていました。
私がやったこととしては、中立を貫きつつ、地道ですけど対話を繰り返す、ということをしました。経営層も含んだアンケート調査をしつつ、お互いの想いをあぶり出して、社長と執行部で結果を見て対話をする、執行部と部長クラスで対話をする、各部署ごとで対話をするなど、少しずつお互いの想いをすり合わせて、具体的に何をするかを決めていきました。
3ヶ月でなんとなく言葉が通じて、半年でお互いのやってみたいということが行動に移せるようになってきて、変化を感じられたのは半年から1年弱でしたね。
難しいところです。予測はできないですね。1年かかる場合もある、でもまずは半年でゴールに向けて全力を尽くします、でも、ゴールに届かないこともあります、とお話をしたりします。
始まってみて「長いじゃないか!」と言われたことはないですね。
うーん…。実際はあります。
3ヶ月でこの部長さんを変化させてほしい、とか。状況を見て予測は伝えて、できなそうなら正直に言ってますね。
青木さんの社長との距離感や関わりも羨ましいです。
ビジネスゲーム導入について
はい。それはすごく効果があると思っています。
私も座学研修を含め、セミナーなども多数出てみましたし、自身でもやっていましたが、効果としてイマイチだな、と思うこともありました。ワークをしてもらったりという工夫をしても、この場が終わったときに現場で実践してもらえるんだろうかという疑問はありましたし、1ヶ月に1回関わっていても毎回ふりだしに戻るような感覚もありました。
ビジネスゲームは、こちらが何かを教えるわけではないです。私もたくさん参加させてもらいましたが、「あちゃー、やっぱり私ここか!」と、自身の弱点への痛みを伴う気づきもありました。
法人向けに提供できるものは研修くらいしか思いつかなかったというところが研修事業のきっかけでしたが、組織開発、組織コンサルティングとしても関われることもわかり、今は組織コンサルティングの一部に研修を据えたという状態です。
組織コンサルティングの中で「The 商社」を入れると効果が高いなと思っています。
「The 商社」というゲームはカードとホワイトボードを使ってチーム戦で戦っていくゲームです。商社なので、資源とお金を手に入れてビジネスを立ち上げて商社を大きくしていくのが目的のゲームです。1チーム3〜5人、5〜6チームで競っていきます。
3種類のカードがあります。ビジネスのカードが書かれたカード、資源を表す資源カード、お金というものがあります。このビジネスを立ち上げるにはこの資源とこの資源とこのお金が必要、というのがあって、それを集めてビジネスを立ち上げます。自分のチームのカードと相手のチームのカードを交換する交渉をしたり、といったことを行っていき、最終的には固定資産や現金を合計して勝敗を決めていきます。
先日はJR博多駅さんで実施させていただきました。コロナや地下鉄七隈線の延線など、環境の変化がある中で頑張ってきたものの、駅員のみなさんに、より自分ごととして捉えて取り組みを考えてほしいという要望があり、実施しました。
非常に盛り上がりまして、こんなにいきいきと研修を受けているのは初めて見た!というお話もいただき、受講者のみなさんからも前向きなコメントをたくさんいただきました。
このゲームは落とし所の設定の自由度が高いゲームです。
例えばある製造業の会社さんですと、A工場とB工場があって、なんで両者でこんなに生産性が違うのか、ゲームを通じてあぶり出したいというニーズがあってやったこともあります。社長の中に仮説があり、それを検証する場となりました。
本人たちにも感じてもらいたいということもあり、振り返りをどうやるかの設定に時間をかけたこともあります。
振り返りの設問の設定次第で落とし所を変えられます。例えば、「ゲーム中にあなたが発揮した強みは何でしたか?」あるいは「弱みは何でしたか?」といった、投げかけで強みや弱みにフォーカスを当てることもあります。
開発元がPROJECTDESIGNさんという富山の会社さんですがSDGsのゲームを作った会社さんでもあります。この「The 商社」はPROJECTDESIGNさんのゲームの中でも一番汎用性が高いとされていて、さまざまな着地を設定できます。どういったことが学べるかを表すならばこの4つが設定されています。
そうです。まさに、経験学習モデルという、経験を抽象化して気づきに変えていくというサイクルを回す場です。
ゲームなんですが、この場で起きていることは現実でも起きていますよね、ということを認識してもらうことが重要ですね。
一般的な研修は講義を受けて、そのディスカッションをする、などなので1番と2番のイメージですが、自分で動くという行動が入ったり、自分や仲間を観察するということもあったり、それを短い時間でやれるというのが強みですね。
人事の方がオブザーバーで入って、配属を検討する、という場合もありますよ。
その要望は多いです。部署で受けたいけど、全員いっぺんに席を外すことはできない、などもあります。そのため、近い会社と数社合同でやったり、外部の研修会社の研修の一コンテンツとして取り入れてもらったりといった形で提供している場合もあります。
他社と学ぶというのも気づきはいろいろあるものです。
診断とアセスメント
基本的には、その方の資質や持っている強みを活かす方向で関わります。ストレングスファインダーなどの資質の診断をして、今活かせていないけどこの資質は持っている、などを見せてもらった上で個別にコーチングをしたりします。
プロモーター、アナライザー、コントローラー、サポーターといった一般的なコーチングのタイプ分けもあります。こちらを活用しつつ、強みを伸ばして弱点を他のメンバーに補ってもらう、といった方法を考えることもあります。
ご本人が自信をなくしている場合は強みを把握していただきますし、チームの中でお互いがお互いの強みを活かせていないよね、という課題があるならチーム内で全員の結果を共有し合うということもあります。
アセスメントは頼りにしていて、お互いに話すだけではわからないことが、客観的なものとして出てくるので、これをもとにコミュニケーションが取れたりするということも有意義だと思っています。
島田さんの今後
ミドルマネージャーの皆さんに、いかに背負い込まずにチームを回してもらうかというのが想いとしては強くありまして、育成のツールの1つが「The 商社」なので広げていきたいという思いもあります。
その一方で、ピープルマネジャー養成講座というのを来年の春にリリースする予定です。
こちらは部下が多様化する中でマネジメントが難しくなっており、一人ひとりに向き合いながらメンバーの成功にコミットする伴走者としてのマネージャーを育てるということを行っていきたいと思っています。
そうです。誰もが持っていて損はないスキルです。
〜第30回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜
島田和子さんにビジネスゲームと研修の極意について、お話をお伺いしました。僕の1つ1つの質問に対して、意味を確認されながら、丁寧に回答いただく姿に、島田さんのお客さまに真摯に向き合う姿が想像でき、とても誠実な方だなという印象が強く残った回でした。
また、僕が「研修」という言葉から「能力開発」を連想してしまっていたのですが、ゲームは共通の体験を得ることが目的で、共通の体験を得られるからこそ、そこでどのようなアウトプットを設定するのかということで、研修の成果が変わってくるというのはとても勉強になりました。
そして、「エンゲージメント」の説明。「エンゲージメントが高い状態とは、恋愛関係や夫婦関係で言うと両想いな状態であり、日々前向きな気持ちで働けていて、結果として生産性や顧客満足度が上がり、ミスや離職が減ってくる。」、この説明は本当にわかりやすく、真似させていただきます!