【いろいろtv_#22】考えることは楽しい!を増やす ゲーム開発への思い

いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社 社長の青木が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。

第22回目は、ゲストに株式会社フレル 代表取締役の江口 昌紀さんをお迎えして、開発された落ち物ボードゲーム「RoRop」について、いろいろおはなしをお聞きしました!

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目次

「RoRop(ロロップ)」とは、まずは動画で

こんばんは。本日は最初にお話しいただく落ち物ボードゲーム「RoRop」の動画をご覧ください。
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なぜ、ボードゲームの開発を?

江口さん、本日はよろしくお願いします!最初に自己紹介と、会社でどういったことをされているかなどを教えていただけますか?

フレル株式会社の江口と申します。

私はゲーム、それも電源を使わない「ボードゲーム」を開発しては販売しています。先ほど動画をご覧頂きましたが、こういうような、ゲームを作っています。

「RoRop」は下から色のついたブロックを取っていくゲームで、コンピューターゲームでは「テトリス」や「ぷよぷよ」に代表される落ち物パズルゲームと呼ばれるジャンルのゲームがあり、それをアナログで作ってみたというものになります。

作っていく中で、子どもたちのために何かできないかなと思い、事業化をした次第です。

ちなみに40歳でございます。

江口さんは以前からボードゲーム開発をされていたわけではないですよね?

そうですね。ボードゲーム開発はここ2年くらいです。もともとはWEB制作をしていました。紙ものやWEBを制作する、となったときの現場監督のような、いわゆるディレクターですね。

なので、よく畑違いなどと言われたりもしますが、僕の中ではあまりそうは思っていなくてですね、面白いことはみんな常日頃考えているでしょう?そのアウトプットがWEBだったり、人によっては映像だったり、写真だったり、グラフィックデザインだったりしますが、ゲームもその1つにすぎないんだよ、と僕は言って回っています。

なるほど!ボードゲームを作ろう!と思う何かがあったのですか?

WEB制作の仕事で例えば飲食店のWEBサイトを作る、といったことがあるのですが、アナログな仕事って楽しそうだなって思う瞬間があるんです。自分がやっているWEB制作の仕事って0を1にする仕事ではなくて、1を10にする仕事だったりするのですが、自分もなにか作るということをやってみたいなと。そういったことを考えながら悶々と2019年頃からRoRopの構想をしていて、2020年後半くらいから、事業としてやってみよう、ということになりました。

最初は、テトリスやぷよぷよのようなものをスマホゲームとして作ってみたいな、と思っていたのですが、プロトタイプを紙で作っているうちに、これはアナログでできるじゃん!と思い始めました。

MDFという木の素材を近所のファブラボというレーザーカッターなどを貸してくれる場所で作って遊んでみていたのですが、その当時は事業化しようとは思っていませんでした。作ったものを友だちに見せて遊んでもらっていたら、面白いじゃん!と褒めてもらえて、それで気を良くして…。そんなライトな入り方で業界入りさせてもらいました。笑

僕は今年45歳で、最近はゲームをしないんですが、テトリスやぷよぷよはゲームボーイやゲームギアでやった記憶があります。数少ない、実際にやってはまっていたゲームですね。落ち物ゲームをアナログでという点がおもしろいですよね。江口さんもテトリスやぷよぷよがお好きだったんですか?

得意じゃないのですが、パズルって1人で遊ぶにはちょうどよかったりとかしますよね。

パズルだけではなくて、ゲームは全般的に好きです。幼少の頃からゲームをしていて、なんならゲームに育ててもらい、大切なことはゲームから学んだ、みたいなところがあります。

今もコンピューターゲームは好きで、RPGをやっては「いい話だなぁ」って思ったり、パズルゲームやアクションゲームを「おもしれ〜」ってやっていたら気づいたら夜中だった、なんてこともありますね。ゲームをしている時間が人生の中でだいぶ長いので、ゲームを作ろうというのは自分の中では必然でした。

とはいえ、大ヒット作をどんどん作れるということでもないと感じているので、自分の中でできることをやっているという感じです。

ボードゲームといえば人生ゲームやモノポリーという印象ですが、そちらを作ろうという発想にはならなかったのですか?

人生ゲームなどのパーティーゲームは僕も好きです。でも作りたいかと言われれば、もう既にあるしな、という気はしました。もちろん、なにか面白いものが思いついたら作るかもしれませんが。

事業化の判断基準について

事業化をしよう、と思ったのは、世のため人のためになることならやろう、という判断でした。

単純に「面白いでしょ?」で終わるのはどうなんだろうという気持ちがありました。世の中に面白いゲームはたくさんあり、それらとの可処分時間の取り合いになったときに、勝てる気もしないですし、わざわざ僕がそれをやる意味もないな、という気がしていました。事業としてやっていく上で、世の中の人たちのためになることってなんだろうと考えたときに、子どもの頃に父親とオセロや将棋をしたのを思い出しました。

父親とは普段たくさん話したという記憶はないのですが、ゲームをしているときは話したなと。ゲームはコミュニケーションとして良いですし、父親に勝ったときに、甘やかされるのではなく父親と戦って勝つという経験って良かったなと思っています。勝った記憶って覚えているものなんですよね。勝って楽しい、考えることで勝てた、考えることって楽しいというきっかけになることはあるなと感じています。

勉強ができるほうではなかったですし、算数とかも好きではなかったのですが、それでも苦手意識がなかったのはそういうことがあったからかなと思いました。中学くらいからは出てくる公式が覚えられなくて落ちこぼれましたが(笑)

小さい頃に同じ場所でフェアに戦えるというのは、身体を動かすこととは違うコミュニケーションになりますよね。

将棋や囲碁などは運を使わないという純粋な思考力勝負ですよね。積み重ねた知識もいらないですし。

一方で人生ゲームなどのパーティーゲームはサイコロやルーレットの運もありますし、頑張らなくても勝てることもあります。でも、将棋や囲碁は頑張らないと勝てないので、だからこそ、真剣に考えますよね。子ども向けの知育玩具にあるような言葉のパズルなんかは、言葉という知識を使うので、純粋なゲームとは違うかなと思っています。

僕は誰もが平等に、子どもと大人でもハンデなく戦えるものを作りたかったので、意図を反映できたいい作品ができたのではないかなと感じています。

僕は最近、思ったらすぐ行動というのを心がけてまして…。買ってみたんですよ、RoRop。6歳の娘と遊んでみようと思ってやってみたんですが、一個一個キューブをとっていくというのは本当にフェアなんですよね。もちろん、大人の僕の方がこうなるんじゃないかということを考えますから、娘には負けないですが、それでも先ほどお話されたように運の要素もないですし、それなのに点数が大きく離れるということもないので、飽きずにやれるんですよね。シンプルでおもしろくて飽きないというのがすごいな〜と思っていました。

ゲームを生み出す方法

こういったゲームを考えるときはどんな思考なんですか?

そうですね…どういう思考かと言われても、あまり考えていないですね。そこまで考えないでできました。恐ろしいことに。笑

なので、再現が難しいです。似たようなゲームを作れと言われてもできないかもしれないです。

でも、いろんなゲームの要素が散りばめられているのは確かです。集めるとか、選ぶとか、点数の計算の仕方など、それぞれ1つ1つは目新しいものではないのですが、それを組み合わせて作ったゲームではあります。

麻雀の牌を使った上海ってゲームはご存じないですか?

端っこにある同一の麻雀牌を取っていくゲームなんですが、こういったものも参考にしていたりしまして、RoRopは、分かりやすく色を選んで取る、というものにしています。1個しか取れないこともあれば、2個や3個取れることもある。行動によって結果が変わる、という感じになっています。

ここで考えないといけないのが、ただ取るだけではつまらないなと。どうやったら自動的なギミックが作れるだろうかと考えた結果、盤面を物理的に斜めにするという方法を取りました。

コンピューターゲームの魅力と比べたときに見劣りしない変化を出すにはどうしたら良いか考えたときに、斜めにすれば動きが出るじゃないかと。これにより勝手に落ちていくので動きが生まれます。思いついたときには、これだ!と思いましたね。

確かに、動かすだけじゃなくて自動で動くというのがおもしろいですよね。

既存のボードゲームは人の解釈による変化という要素が大きいです。ただ、人の解釈以外の要素が入るとおもしろいのではないかと考えまして、自動的な部分を作りたいなと思ったんですね。

斜めにするのはご自身でDIYしているときに思い付いたのですか?

ペーパープロトタイプを作っている段階で、思い付きました。紙だと動かないけど積み木なら動くんじゃないかと思って、自分でレーザーで木材を切って溝を作って…というのをやりました。

コンテンツ制作をしていたバックボーンがだいぶ生きたなと思います。レーザーカッターの図面をイラストレーターで作ったりといった感じですね。なので、作ること自体はさほど難しくなく、すっとできました。もともとゲームが好きだということで、組み合わせるアイディアも多かったので。

大変だったのは事業化ですね。製造するって大変だなと。製造コストは思うように下がらないものです。みなさんが普段見ているおもちゃって、とんでもなく安い金額で作られているんですよね。なんでそんな金額で作れるんだろうかと。

僕はそんな中で、オール木ですし、製品版は家具に使われる木材をCNCという木をくり抜く技術で作っているので、製造コストがかかっているんです。それを流通に乗せる、量産体制を作る、など、結構大変でした。軽い気持ちで作りましたがエライ目に遭いましたね(笑)

事業化という意味だと、RoRopを購入する人が増えるというのが良いんですかね?売上が上がっていくという面で。

シンプルにはそうですね。ゲームを売ってそのお金でやっていけるというのが良いです。おかげさまで、ちょっとずつ売れてきました。先日も長崎県の展示会に出展したのですが、そこでバイヤーさんに見ていただいたり、子どもたちに遊んでもらったり。手応えを感じることができました。

世に出すことで広がる世界

子どもから大人まで遊べると思いますが、メインはやはり子どもですか?

まずはお子さま、それこそ父親と僕が将棋をしていたような、8歳前後かな、というのをメインに見据えています。

ただ、いろいろな方から言われるのは、「これ、うちの介護施設でも使ってみたい」ということですね。愛好家の人たちにアブストラクトゲーム * として買ってもらったり、子どもたちの玩具として買ってもらうだけではなくて、介護に使えるという可能性を感じる方もいらっしゃるようです。

東京のおもちゃ美術館の館長さんとお話をしたときに聞いたのですが、老人ホームにおもちゃコーナーを作って無料で地域に開放したところ、子どもたちが老人ホームに出入りするようになり、それを見たいおじいちゃんおばあちゃんたちが見に来るようになり、立ち上がって移動するようになったので、寝たきりの方が減ったということがあったそうです。

子どもとおじいちゃんおばあちゃんが会うといういい効果も出せそうだなとも思いますし、単純にゲームを一緒に楽しんでもらえるというのも良いかなと思っています。

* アブストラクトゲーム
抽象的な(アブストラクト)ゲーム。ルールが明快で、偶然が関与せず、ゲーム内の情報のすべてが公開されているゲーム。リバーシや五目並べ、マンカラなど。

手を動かすプラス、頭を動かすという要素がありますもんね。

これは事業化をして初めて気がついたことでした。

子ども向けのゲームだと自分で思い込んでいましたけど、お年寄りも楽しめるんだという気付きは新鮮でした。海外のゲームは子どもから高齢者まで遊べるというものが多かったりするのですが、それが僕のゲームでも実現できるんだ、というのは自信につながりましたね。

ゲームのルールづくりから考えるSTEAM教育 *

* STEAM教育
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字。5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念。分野を横断した学びで課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成する。

主なルールが2つありますが、これはゲームを作る前に考えていたのですか?それとも作りながら考えたのですか?

普通のゲームだとルール作りが先だと思うんです。ルールが先にあって、それが実現できるボードづくりをどうするか、という順番で考えるはずです。

僕のRoRopもそうでした。ただ、作っていく中で、これは他のルールでも遊べるよな、ということに気づき、そこでできたのが四目並べという遊び方だったりします。

デジタルと違って、物理的なゲームってプロダクトとしての物がありますから、別の遊び方ができたりします。ボールとバットがあって、それが野球やクリケットという種目の違いがあったりみたいなイメージです。クリケットはバットが違いますけど。笑

そうですよね。うちもやっていると、娘が自分が負けないルールを自分で作ったりすることもありました。僕が二回連続とかで勝ってしまうと、負けず嫌いの血が騒ぐのか、遊び方を変えてきたりします。

そのルール、あとで教えて下さい!笑 今度、遊び方紹介のところに書きたいです。

マニュアルの最後のページにも、自分の遊び方を作ってみよう、というページを設けていて、収録している遊び方以外の遊びも推奨しています。

なんで推奨しているかというと、それが学びになるということ、僕自身も子どものころにゲームのルールを改変して遊んだ思い出もあったりするのでそういうのは良いなと感じています。

これはゲームがコンピューターゲームになることでできなくなったことなんです。自分のルールを追加するということができないので、ここをもうちょっとこうした方がおもしろい、という工夫がしづらいのです。アナログゲームの良さは、ルールの追加や変更が簡単にできることです。ゲームづくりをやりたいと思ったときにデジタルだとできないけどアナログだとそれができるので、子どもがゲームデザイナーを夢見た時に、その体験ができるという良さもあります。

自分で課題を設定して、自分でその解決策を考えて、それを人にプレゼンテーションし、フィードバックを受けて改善する、という流れができるのです。自分でルールを考えて、それを人に伝えて良し悪しを見てもらうという行為がそれにあたります。大人社会で当たり前にやることを、ゲームを通じて行うことができるのは、学びとして良いのではないかと思います。

小学校でSTEAM教育なんて言われて、プログラミング教育が進んでいますが、画面に向き合うことがプログラミング教育なのではなくて、仕組みを考えるというところがプログラミングですし、論理的思考を学ぶにはアナログゲームも良いんじゃないかなと。

それが縁で佐賀県の有田町で生涯学習の一環として取り入れてもらうということになりました。それから、福岡の雙葉学園で来年度、教育での効果について考えてみたいというお声掛けもいただいています。

江口さんの事業への想いにも合致していますね。

「考えることは楽しい」と言い続けていますけど、それを実現するための一つの方法になっています。学校の教育に協力できるのは嬉しいです。僕は教育者ではないので教育について語ることはできませんが、教育に寄り添える可能性は世のため人のためになるんじゃないかな、と思ってます。

有田町の生涯学習はどんな取り組みになりそうなんですか?

有田町の生涯学習センターという場所があるのですが、そこで子どもたちを中心に学童などで活用してもらうという感じです。生涯学習なので、子どもたちだけでなくておじいちゃんおばあちゃんに使ってもらうというのもあるなと。

ゲームっ子が叶えていく夢

生涯学習センターのことや介護など、広がりが期待できますね。現在はいろいろと活用事例を集めているという段階ですか?

可能性がどれだけあるかを見定めるフェーズです。当然普通に売ってはいますが、それがどういうふうに教育に寄与していくのかなど、形として見てみたいと思っています。少しおおげさかもしれませんが、それも研究なのかなと。

それから、RoRopを海外に広げていきたいなという気持ちもあります。RoRopは言語がいらないので、言葉が通じなくても遊べます。こういったゲームはドイツやフランスが本場なので、そういうところでどう評価されるかを見てみたいので、今年はドイツの展示会に持っていこうと思っています。

自分の人生において、世界の裏側にまで通用する可能性のあるゲームとして出していける最初で最後のチャンスかもしれないと感じています。40年生きてきて、世界の人の役に立てるチャンスはなかなかないものなので、挑戦してみたいと考えています。

東京の展示会に出していたら、海外の記者の方が紹介してくれたので、得体のしれないものではなく、一応まずは受け入れられそうだなという感触もあります。

海外に進出されるということで、すごく楽しみになりますね。ワクワクするお話をありがとうございました。

〜第22回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜

RoRopの開発や展開についてお聞きした『いろいろTV』22回目の放送でした。いつも視聴いただき、ありがとうございます!

僕はデジタル関連の仕事をする機会が多いので、モノづくりにとても興味があり、ボードゲームの開発の経緯など、お聞きできて、とても楽しい時間でした。

とてもシンプルなゲームだからこそ、遊び方を考えられたり、遊ぶ人を選ばなかったり、とても広がりを感じられ、海外での展開もとても楽しみです!