【いろいろtv_#28】九州アスティーダ×いろいろ 卓球を通じた地域活性って?

いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社代表の青木大一郎が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。

第28回目は、ゲストに九州アスティーダ株式会社 代表取締役の川面 創さんをお迎えして、川面さんのご経歴や卓球指導、卓球の普及や企業・地域での活動など、いろいろおはなしをお聞きしました!

目次

トップ選手から指導者へ。川面創の挑戦。

川面さん、本日はよろしくお願いします!まずは自己紹介からお願いします。

よろしくお願いします。

三重県の伊勢出身で高校までは三重で過ごし、大学は立命館で、卒業後は実業団でプレーしていました。選手を引退してからは、母校の立命館大学で、監督として、インカレ優勝や関西優勝なども経験させてもらいました。

2021年、Tリーグ初の新規参入チームとして、九州アスティーダの社長兼監督となりました。Tリーグにはクラブチームや企業母体のチームがありますが、九州という広域でチームを構えているのは九州アスティーダだけです。

Tリーグは、オリンピック選手も全員参加しているリーグで、世界的にもかなり高いレベルのリーグになっています。

立命館で指導者として、活躍されながら、ジュニアの日本代表の指導などもされていたんですね。選手から指導者に変わるタイミングがあったと思いますが、いかがでしたか?

実業団にいたときは、若手に負けるとは思っていなかったので自分の胸を貸してやる、というくらいの気持ちでいました。自分が選手を引退したときも、選手たちに対し、なんでこんなこともできないのか、という気持ちもありましたが、今思えば自分ができること=選手ができることではないということを学ぶいい機会になりました。

その後、Tリーグというトップリーグでオリンピック選手を対戦相手として見てきたので、日本の卓球レベルの向上も感じ、僕自身もどんな指導をするのかをちゃんと考えないといけないなと思いました。

僕自身にとっては選手の時の方が楽だったと感じています。楽という表現は適切ではないかもしれませんが、自分のことだけに集中できるという点では僕は楽だったなと感じるようになりました。やはり、教えるということはとても難しいです。

指導の方法論などを勉強されてから指導者になるわけではないですよね?

今はyoutubeなどでも学べるものになってきたのでありがたいですが、選手も同じように学べる時代です。プロ野球選手のコーチともお話したりしますが、メジャーリーガーを目指す選手は、アメリカの情報にとても詳しかったりします。そうした情報をコーチにも質問してくる時もあるので、適切な対応ができないと「世界を見ていない人だな」と思われてしまう場合もあるようです。

指導者は、相手がどれくらいのレベルを目指しているかを把握した上で、どのような指導をしていくかを考えることが大事な時代になりました。

卓球はオリンピックでメダルを狙える選手がたくさんいるかと思いますが、指導者としても高いレベルを求められるということですね。

その通りですね。

力をつけたい選手は求めてくるものも大きいです。レベルを上げていこうと思うと海外に目がいきます。福原選手、石川選手、水谷選手といった選手たちは中国人のコーチに師事していましたし、世界を目指そうとする選手は世界レベルのコーチを求めます。

Tリーグの監督を経験されて、指導の内容も変わってきましたか?

Tリーグで1年戦ったことで、このままではいけない、ステップアップするためには必要な指導や技術をこれまで以上に考えるようになり、選手と向き合ってきましたので変わった実感があります。

選手それぞれで指導法は異なるのでしょうか?

そうですね。ある程度卓球が強くなる指導や練習の方法というものはあります。また、こういう特徴を持つ選手にはこういった練習、こういう技術が足りない選手の場合はこういう練習、というメソッドはあります。

指導者が大切なのは、適切なタイミングで選手に何が必要かを見極めることだと感じています。レベルアップしている選手には、次のレベルの指導をすることも必要になります。

指導者としての川面さんだけでなく、球団の社長としての川面さんもいらっしゃいますが、九州アスティーダを立ち上げたきっかけを教えてください。

Tリーグは2018年に設立されました。男子4チーム、女子4チームから始まり、その状態が3年ほど続いていました。

プロ野球は12チーム、JリーグはJ1だけで18チームあります。ロンドンやリオのオリンピックでメダルを獲得して、卓球の露出が増えているのに、卓球界で一番盛り上がらなければならないTリーグが4チームしかないことに違和感を感じていて、なんとかしたいと思っていました。

もちろん僕一人でできることではなく、地域の方にお声掛けいただき、応援していただかないと新チームの設立はできません。どの地域でできるかなということも考えていました。例えば京都も長く暮らしましたし、地元の三重も考えました。

そういったタイミングで、九州のあるスポンサーからお声掛けいただき、もし僕でよろしかったら、という話になり、九州で立ち上げることになりました。地域のみなさんとスポンサーのみなさんに感謝です。

Tリーグへの参入。Tリーグの状況

卓球の指導者としてのキャリアから、転身されたわけですが、不安はなかったですか?

不安はなかったです。あったらやってないですね。

Tリーグへの危機感、Tリーグで新しいチームを立ち上げたいという想いが僕のモチベーションになっていました。

せっかくですのでTリーグのお話もさせていただきますね。

Tリーグは2018年に開幕しました。

各メディアも多数放映し、両国国技館で開幕試合を開催しました。卓球のプロリーグとしては世界では遅咲きの部類です。

Tリーグの設立のきっかけは、中国のスーパーリーグに日本人を含めた外国人が参戦できなくなったことでした。

そのため、競技力を維持向上させていくためのリーグが必要となりました。

現在では男子6チーム女子6チームのリーグになっています。男子はクラブチームが多く、女子は企業チームが多いです。

チームはもう増える予定なのですか?

8チームくらいにはなるのではないでしょうか。また、T2リーグを作るなどの展開も検討されていくでしょう。

Tリーグは卓球選手にとって、「Tリーグでプレーしたい!」という存在なのですか?

「Tリーガーになりたい」という選手も多く、海外のトップ選手も参戦するリーグになっています。

各エリアにチームがあるというのは選手の視点からも重要ですか?

重要だと感じています。

九州アスティーダは熊本、佐賀、福岡出身の選手が在籍しています。今後は鹿児島、宮崎、長崎といった九州各県の選手も獲得できればと考えています。

卓球はどのエリアが強いなどの地域性はあるのですか?

女子に関しては大阪が強いですかね。

卓球人口のイマと、これから

卓球ってどこでもできますよね?と言われることは多いのですが、その通りで、卓球愛好者はとても多いです。週1回でも卓球をやる人は800万人いるそうです。

トップリーグがある競技では1位です。3歳〜80歳までできるスポーツですし、場所もあまりとらず、今からやろう!と、すぐにできるという点などもその理由です。

卓球やろうと楽しもうと思っている卓球興味層は2,290万人とも言われ、卓球の加盟協会数はFIFA超えの世界1位です。

しかし、毎日やるような競技登録者数は35万人と、一気に減ります。サッカーやバスケに比べると競技者は少ないという特徴があります。そのため、競技者を増やしたい、という想いもあります。

ちなみに、中国の競技人口は、なんと9,200万人だそうです。国技と言われるだけありますね。

すごい競技人口ですね、、、この競争を勝ち抜いた選手が中国代表なんですね!

だから、強いんです。

イチロー、松井などのメジャーリーガーが凱旋すると空港がメディアでいっぱいになりますが、中国の場合は、卓球選手が帰国すると空港がメディアでいっぱいになります。

数億円稼ぐプレーヤーも中国には多いですし、夢がありますね。

また、卓球は少子化でもあまり影響を受けていないです。

競技人口35万人中25万人が中学生です。2人でもできる競技であるというところが、少子化に強いという特徴につながっていると言われています。

この数字のデータはおもしろいですね!九州アスティーダとの取り組みがきっかけで、初めて卓球に関わるようになったのですが、卓球はやったことがありますし、身近なスポーツだと思っています。 卓球バーなど、そういう場でもできるというのがおもしろいですよね。

渋谷の一等地にも卓球バーはあります。スーツ姿でもできるスポーツですね。テニス、サッカー、野球とはそのあたりが違いますね。

競技人口35万人の大部分が中学生というのはすごいですね。

中学生までは競技者登録をしないと、大きな大会に出られないからという側面もあると思います。

ただ、この状態を良しとはできず、もっと競技人口を増やしたいです。大学生もシニアも。

卓球大会は全年齢のカテゴリーがありますので、まだまだ増やすことはできると感じています。

スポーツの記事などで、裾野を広げるという表現を使うことも多いと思いますが、Tリーグに携わっていると競技者をどう増やすかというのは気になるところですか?

愛好層が800万人、競技者層が35万人というバランスを変えられればと思っています。ただ、この800万人が競技者層に移行しなくても、Tリーグを見に来てくれる、というのでもいいと感じています。競技人口を増やすこともそうですが、試合を見たいと思ってもらうことも大切だと考えています。

800万人という愛好者は、卓球のどんなところを魅力に感じられているのでしょうか?

一番はスピード感だと思います。速さを楽しみたいという人は多い気がします。

九州アスティーダが実現したい未来

次に九州アスティーダとして実現したいことについてお聞きしていきたいなと思います。

僕らとしては実現したい未来をこんな感じでイメージしています。

九州アスティーダがハブになって、中堅企業、行政、大学、観光客、地域の方、教育機関などをつなぎ、地方創生を実現したいと考えています。そのために、うまく九州アスティーダを活用してほしいと思っています。

スポンサーとして応援してください、ということだけではなく、九州アスティーダが提供できるフィールドで、事業や実証実験など、様々な活用をしていただきたいなと考えています。

例えば、福岡大学の商学部と連携させてもらい、VR卓球の体験会を中高生向けに行いました。長蛇の列ができて、楽しんでもらえましたし、大学生も中高生からのフィードバックを受けられたと喜んでいました。このような活動を企業の方にもやってもらいたいと思っています。

また、企業での卓球イベントも行っています。

今の若い方たちは違うかもしれませんが、温泉=卓球というようなイメージはありますよね。特に九州は温泉地に有名な旅館も多いです。企業や旅館と連携しながら何かをやれたら良いなと思いますし、先日は企業の卓球大会にも呼んでいただきました。

社内に「卓球がうまい」という人って何人かいることが多いのですが、社内の大会で上位になった方を九州アスティーダの選手圧倒します。

観ている方からすると、プロってすごい、と感じてもらえると思いますし、プロの試合を見てみたい、という反応をいただけます。曲がるサーブなど、すごい回転を体感してもらったりもします。

プロのプレーを見ていただく機会を増やすことで、試合会場で見たい!という人を増やす活動になればと考えています。

眼の前で実際にプロのプレーを見るとやはりすごいものですか?

例えば、回転は体感しやすいかもしれません。ボールをラケットに当てることはできても、それがすごい速さで落ちていったり、どっかに飛んでいってしまったりといったことがおきます。

卓球選手は当たり前に回転のかかったサーブを返すことができるのですが一般の方にはまず無理ですね。

小学生がプロ選手に。地元の夢を作る

Tリーグの試合数についてはどうお考えですか?

試合数は今は少ないと思っています。今後は必ず増やしていきます。

一方で、オリンピックなどで必要となる世界ランキングを上げるための試合にも参戦する必要があり、バランスは考えないといけません。

ただ、今の20試合は少ないので、年間25試合、30試合と徐々に増やして、年間40試合くらいができるようになり、半分はアウェーだとしても半分は九州で開催できたらいいなと思っています。

今シーズンは杵築から始まり、秋田、延岡、福岡、田川などでホームゲームが開催されます。福岡大会はいろいろ社と盛り上げたいなと思っており、いろいろなことにチャレンジできればと思っています。

九州の全県で開催できると良いですね。

試合数が増えていけば、皆さんの前でお見せできる機会も増えるので、もっともっと増やしていきたいです。

開幕試合の直前ですがチームの雰囲気というのはどうですか?

選手と監督で、どう戦っていくかを考えたりしています。

初戦は緊張感も強いです。

川面さんとしては、監督ではなく社長としての初めての開幕戦ですが、どうでしょうか。

今までは、監督兼社長という立場でしたが、今シーズンから社長業に専念することになります。

応援してもらっている企業の皆さんへのご挨拶もできるようになりますし、ちょっとうれしい部分もあるなと思っています。

ちょっとした寂しさも感じますかね?

おっしゃるとおりですね…。これまでベンチの外に座ることはなかったので。何を感じられるかなと思います。また青木さんにはお伝えしますね(笑)

指導者から経営者に役割が変わりましたが、やりたいことは増えましたか?

そうですね。具体的には、新しい取り組みの事業化、大学生などと一緒に取り組みこと、さまざまな想いを形にしていくということを進められそうだと感じています。

九州ならではということもやりたいです。アイディアがたくさん出てきているので、いろいろ社と具体化していきます。

今日、お話をお聞きしていて、川面さん、卓球大好きですよね。

恩返しというか。お世話になってきた競技ですし、卓球界への恩返しもしたいですし、子どもたちの夢と希望になれるようなプロチームになりたいと思っています。

今年は福岡ゆかり、九州ゆかりの選手も獲得できました。

地元でプレーするというのは選手としても気持ちが入るものですか?

地元で貢献したいという想いを叶えるということ、地元の子どもたちに夢を見せたいという声が選手たちからは多いですね。

選手側も、このチームでやれてよかったと思ってもらえると、観客のみなさんも楽しいと思います。

他のスポーツだとアンダーのカテゴリー(ジュニアなど)もありますが、Tリーグはどうですか?

ユースやアンダーは作っていかないといけいないです。

九州アスティーダとしても、小中学生の九州チャンピオンとの契約なども積極的にできればと考えています。去年の熊本出身の中学生チャンピオンとも契約しました。

Tリーグは高校に所属しながらも出場できるんですよね。

そうです。二種登録できます。

団体競技ではない点の良さですね。なので、ある企業に所属しつつ、他のチームの選手として出場するといったこともあります。

九州出身の選手は多いのですか?

熊本や鹿児島などは卓球が盛んなエリアです。小学生の大会では福岡のチャンピオンが、日本チャンピオンになりました。

ユースのチームができたら、それを目指して、という感じになるんですよね。地元で卓球を続けるというのが現実的になりますね。

小学校4年生の子がうちのチームと契約していますが、最年少ですね。

天皇杯や皇后杯は年齢も関係ないです。こういう契約をもっとやりたいと水面下で動いています。

夢がありますね!

小学生がプロ野球選手になるのはかなり難しいですが、Tリーグ選手にはなれます!

地域での卓球教室もびっくりするくらいの数を行っています。そういったことから、地域とのつながりを作りつつ、卓球界をもっともっと盛り上げたいと思っています。

〜第28回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜

『いろいろTV』28回目のゲストは九州アスティーダの川面創さん、プロスポーツチームの経営者との初めての対談でした。

川面さんのお話をお聞きし、プロスポーツチームには、一般的な企業とは異なる多様なステークホルダーが存在し、経営者にはバランス感覚がとても求められるのだろうと感じました。

競技や興行という視点では、近日中にTリーグの初観戦が控えていて、とても楽しみになりました。

いろいろ社としては、九州アスティーダが描く世界観を実現するため、プロスポーツチームの新しい事業構造を構築することで、貢献できればと考えています。