【いろいろtv_#31】『学校のイマ!』部活動の地域移行の実際!!

いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社 代表の青木が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。

第31回目は、ゲストに株式会社WIDE代表取締役の北原誠大さんをお迎えして、部活動の地域移行やWIDEの事業など、いろいろおはなしをお聞きしました!

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目次

仲間と一緒にいる時間を増やすための起業

本日はよろしくお願いします。まずは北原さんやWIDE社について、紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

みなさん、はじめまして。株式会社WIDEの代表をしております北原と申します。

株式会社WIDEは高校の同級生4人で設立した会社です。

高校の同級生とはいうものの、実はそのうち3人は小学校から一緒の幼馴染です。

私は今年大学を卒業したばかりでして、大学の在学中に起業した会社となります。起業してからは1年半くらいです。

私は小中高大と、全て佐賀県の学校に通っていて、佐賀県から出ずに過ごしていまして、佐賀県が大好きです。

佐賀大学の教育学部を卒業しており、実は小中高の教員免許も持っています。主に高校の日本史が専門です。両親も姉も祖父も教員だったので、教員一家で過ごしていました。なので、なんとなく自分も教員になるんだろうなと思っていたのですが、急に教員とは真逆ともいえそうな起業という道を選択したので、両親からはものすごく反対されました。

そうなんですね(笑)

右側にいる永石も教育学部ですね。彼は技術の教員の免許を持っています。プログラミング教育などが専門で、唯一の理系です。

その隣の三枝は感覚系ですね。デザインなど、感覚で良いものを創ってくれます。

山口はしっかりものタイプで、きちんとやらなければならない経理などを見てくれています。

同級生というお話は聞いていましたが、小学校からの方が多いというのは初耳でした。

逆に、大学はバラバラでしたね。

幼馴染で同級生という関係性というのは、やりにくくはないのでしょうか?

大学で場所がそれぞれの時期は、リモートで活動していました。大学2年から3年までが新型コロナウイルスの影響を大きく受けて、リモート授業だったので、みんな佐賀にいました。そのため、コロナの時期は逆にみんな一緒にいる時間が長かったです。

どういった経緯で、この4人で起業することになったんですか?

仲が良くてですね。大学に入ってからも、よく集まったりしていて、そろそろ就活をしようか、という時期に、このままみんなで一緒に働けたらいいよね、という話をするようになりました。

就職したら一緒の会社では働けないよね。だから起業しようかな…。という流れでした。

何をやるか、というよりも、誰とやるか、というほうが先だったんですね。

そういう側面が強いかもしれません。もともとは僕以外の3人が起業しようとしていて、僕は教員になろうとしてました。でも、3人の話を聞いていると、何をするか決まっていなくて。YouTuberする…とか、見るに堪えない状態になっていまして(笑)

私も教員以外で教育に携わる道ってないかなと模索していた時期でもありました。部活に課題感は感じていたので、それで起業できるなら参加したいなと思い、3人の中に自分が入っていった感じです。

部活への課題意識と、sukusupoについて

部活の当事者だった頃から時間があまりたっていないと思いますが、部活をやっていた時に課題感や原体験があったんですか?

中学生、高校生のときは課題意識は強くなかったです。だんだん強くなっていった感じです。中学校のときはサッカー専門の先生が来てくれていて、3年生のときはいなくなりました。それを喜んでいた立場でしたね。「怖い先生がいなくなった!嬉しい!」という感じです。

高校2年生の時に専門の先生が来ることになり、この先生が自分の人生の中での恩師だと思っています。サッカーの楽しさを教えてくれました。どんどんうまくなっていく実感のある1年でした。そのとき初めて、もっとちゃんとやっていればよかった、と後悔しました。

大学に入ってからは、自分がちゃんとしていなかったのも原因だけど、ちゃんとさせてくれる環境じゃなかったのも要因ではないかと思うようになりました。大学1年生のときから高校の部活に、外部指導者として関わることになり、部活と関わる中で、構造上の課題を感じるようになりました。子どもはどうすることもできないので、大人がそれを解決しないといけない、と考え始めました。

なるほど、そのような想いから創業された会社の事業について聞かせてください。

部活動は学校の先生が顧問になるというシステムである以上、専門外の先生が指導するケースは往々にしてあります。サッカー部の先生は卓球しかしたことのない先生だったり。

それは先生にとっても精神的な負担になり、子どもたちにとっても良い環境とも言えません。それを解決するための外部の人は存在するので、招き入れれば解決できるのです。しかし、そもそも卓球しかしていない先生は、サッカーの人脈がないので、外部人材を招き入れるということ自体が難しいのです。

そこで、外部の指導者とチームをマッチングする手段を作りたいと思い、「sukusupo」というサービスを立ち上げました。

「すくすく」と「スポーツ」に取り組んでもらいたいという想いを込めて、「sukusupo」という名前にしています。

簡単に言うとマッチングプラットフォームです。既にローンチしていますが、指導者をしたい人と指導者を求めているチームの双方が登録し、互いにオファーを送りあえる仕組みになっています。

このsukusupoが弊社のメインの事業となっています。

外部指導者が必要だというお話でしたが、チームから求められる要件はどんなことなのですか?どんな人に来てほしい、など何か傾向はありますか?

チームの捉え方が結構難しくてですね。生徒の集合体という意味で捉えると、「生徒がどんな人に来てほしいか」となります。また、顧問の先生にとって「来てほしい人」も違います。また、結構よくあるのは保護者の期待ですね。保護者は部活の状況を見かねて外部人材を探すというケースもあります。

生徒側が成功体験を積みたいと思うことはないでしょうけど、保護者が自分たちの子どもに成功体験を積んでほしい、技術の向上を目指してほしいといった要望があります。

学校側としては、うまくする技術よりも、しっかりした人なのか、教育の一環であるということを理解している人なのかを意識していることが多いです。

あとは条件ですね。何曜日の何時に毎回来れるか、競技の経験があるか、あとはその地域や学校の要件として、20歳以上であるか、教員免許を持っているのか、などを問われる場合もあります。

求人という書き方をされていたと思いますが、外部人材の採用は通常のパートタイムと同じような流れですか?面接などもありますか?

チームと指導者が契約する前には、私たちも同席しての顔合わせというか、打ち合わせを行います。全員がOKとなったら契約ですね。

プラットフォームとしての機能だけではなく、WIDEの方たちも入ってマッチングの精度を高めているんですね。

これが月100件超えてきたらやり方を考えないといけないかもしれませんが、まずは1件1件を丁寧に、と思っています。

今は、ないものを作り出しているというフェーズなんですかね。

マッチングサービス自体は世の中にたくさんあるので、仕組み自体は受け入れてもらいやすいです。だからゼロイチかと言われれば違うかもしれません。

ただ、部活の分野でというのはなかなかないので、どんな人が来るんですか、といった興味を持っていただきやすい状況ですね。

部活を資金面でもサポートする事業

sukusupoのもう1つのサービスについてもお聞かせください。

sukusupoとしては、マッチングサービス以外にも部活のオリジナルグッズの製作販売事業もやっています。

部活のオリジナルの、例えばスマホケースやタオルなどを作ることができますよというサービスです。

こちら、私が指導に携わっている鹿島高校のサッカー部の商品です。

仕組みはシンプルで、グッズが販売されると部活動に売上の一部が還元されるというものになっています。

例えば、ユニフォームにはエンブレムやロゴが入っていたりすると思いますし、あとは弊社の三枝が趣味なんじゃないかと思うレベルでずっとデザインを作っていたりします。

それをECで販売して、保護者やOBが買ってくれたときに、チームに還元されるという仕組みです。

外部指導者を採用するには財源も必要ですが、それが不足しているチームも多いので、その助けになればと思い始めました。

部活動の運営資金はどこから出ているものなのでしょうか?

多くは部費の集金です。こちらは保護者から支払われている形が多いです。それ以外ですと学校の中でそれぞれの部員数に応じて予算が割り当てられていたりします。

なるほど、運営資金の調達を支援するようなサービスなんですね。

自分も母校に思い入れはあるのですが、OBとして、どう支援していくのかを形にするのは難しかったりもします。OBがもっとチームを応援しやすくなる仕組みがあったら、お金が回るんじゃないかな、と考えました。

OB、OGの他にも現役の部員、保護者も購入するんですか?

むしろ、保護者が喜んで買ってくれるケースが多いですね。子どもの背番号入りスマホケースにしていたり、試合の際にはTシャツを着たりしていらっしゃいますね。

OBから寄付金を募るのは昔からあると思いますが、形態を変えられるということですね。 買う方の方からのご意見はなにかあったりしますか?

グッズに関してはOBだから買う、というのではなくて、かっこいいとか、デザインが良い!とか、そういう買い方をしてもらえるようにしたいと思っています。

寄付のような押し売り感ではなく、欲しいから買うという流れを作りたいと考えています。

私は鹿島高校出身なので、鹿島高校の出身者だからわかる校訓がデザインされていたりとか、そういう遊び心は持っていたいと思っています。

デザインが良いから買ったよ、というお声をいただくこともあります。エンブレムをいただくだけではなくて、保護者や選手の意見も拾いながらグッズデザインに反映させていきたいと考えています。

せっかくなので、鹿島高校のグッズの販売ページも見せていただいてもいいですか?

こちらです。

かっこいいですね!

もともとあったTシャツは鹿島って漢字で書いてあって、後ろに鹿魂!って書いてあって、普段着るには抵抗があるものだったので、普段使いできそうなデザインにしました。

また、白いスマホケースは鹿島高校の赤門をデザインしています。鹿島城というお城が昔あって、その門が今の鹿島高校の門になっています。それが赤門というのですが、それをモチーフにしました。また、周りには「平凡道を非凡に歩め」という鹿島高校の校訓があります。私も座右の銘のようにしているのですが、OBなら刺さる言葉の1つです。

関係者だからわかる、というのはこういうことなんですね。

サッカー部以外でもこれは好評のようです。

あとはユニフォームですね。ゴールキーパーとフィールドプレイヤーのユニフォームモチーフになっています。

特にどれが売れているとかありますか?販売価格の設定も難しいですよね。

一番売れているのはTシャツです。高校サッカーの冬の選手権の時期なので、大会前にお揃いのグッズとして保護者の方が買ってくださったり、勝ち進んだらOBが買ってくれたりということがあります。

ユニフォーム型のスマホケースは、保護者や選手が買うので1商品に付き1つ売れるかどうかというところですね。赤門は人気です。

価格設定については、今でも模索中です。

最初は制作会社さんに原価を聞きつつ、販売価格を設定していきました。部活のクラウドファンディングなどにも持っていけると思ったので、最初は高く設定しました。Tシャツ1枚5,000円、などですね。ただ、部活の先生からは、保護者も買うだろうから保護者も買いやすい値段にしてほしいという要望をいただきました。そこで調整して、1枚3,500円くらいにしていますね。

こういうグッズがほしいという声もありますか?

2件目は陸上部のお客さんだったんですが、シューズケースやステッカーの制作相談がありました。あとは夏の時期にうちわを作って欲しい、などがありましたね。

制作をお願いしている会社で対応が難しいこともあったので、うちわ専用の業者を探したりと個別の要望にもお応えしていました。

部活の実態。世間のニュースとの差異は?

教師の方の負荷軽減、部活の外部化や地域移行などがニュースで取り上げられることも多くなっているように感じますが、報道されている内容と北原さんが経験されている実際の現場とでは違いはあるものですか?

おおまかには一致しています。文部科学省やスポーツ省が言っている課題なども大きな認識の相違はないと思います。

ただ、改革をしないといけない時に、改革を推し進める担当が教員や教育委員会という点が問題だと感じています。

文部科学省は教員が忙しいという問題を掲げているわけで、改革を進めてくださいと教員に伝えても、忙しくてできないと感じています。なので、現状維持でとりあえず回しておこう、という結論になりがちで、改革が進まない面があると思います。

学校は年度で動いているので、改革自体も進め方が難しいのかなとも思います。独特ですよね。改革を進めようとなったときは、どういった進め方が良いのでしょうか。

一番は僕たちのような外部の人たちを活用することだと感じています。もちろん全部任せるのではなく、コーディネートを任せるなどが良いのだろうと思います。

象徴的なエピソードですが、先日、ある市町の改革の会議に参加させていただきました。

校長先生、主任の先生、部活の先生などが揃っていました。その市町には2つ中学校があり、その2つの学校の部活を合体させるほうが良いのではないかという話がありました。教育委員会側からの提案です。

ただ、今、その改革を進めると調整作業などを含めて、対応するための工数が大きくなってしまうので、今はまだ子どもたちの数もなんとか活動できる人数としてギリギリやれているから、今すぐ改革しなくてもいいんじゃないか、という意見が出ました。

教員としては現状で現実的に対応できるかという点を考え、教育委員会としてはこれから困ることが目に見えているのでどうにか進めたいという点を考えるので、意見のせめぎあいになります。

そのため、良い意味でこれまでの経緯や風習や文化を知らない人たちが入って行動する方がうまくいくこともあるかなと思います。

子どもたちにとっては、部活はそのタイミングでしかないじゃないですか。僕はどうしても保護者視点になってしまうので、問題があるならできればすぐに改革してほしいなと思ってしまいます。

まさにそのとおりです。昨年文科省から発表された方針が、「3年後までに土日の部活動をまずは地域移行します」ということだったんです。

子どもたちのために部活の地域移行をして、副次的に教員の多忙を解消するという目的を掲げているのですが、土日のみを地域移行した場合、平日と土日で指導者が変わることになります。練習を見る指導者と試合を見る指導者が違うということになると、例えば練習を頑張っているのに試合に出してもらえない、ということも起こりうるのです。

教員が土日に働かなくて良い環境を作ることが第1義になってしまって、子どもたちファーストで考えられているのかどうかという疑問は残ります。

どの立場で考えるかで大きく変わりますよね。自治体/地域/県など、どの単位で考えるとうまくいきそうだと思われますか?

難しい問題ですね。田舎ほどチームの数に対して人の数が合っていないという現象が起きています。市でまとまっていくのが良いだろうとは思うのですが、田舎であればあるほど、市でまとまってもチームが成り立たないということがあります。子どもがいっぱいいたときのままチームが残っていて、子どもの数だけ減ったというアンバランスな状態になっているのです。統合等でチーム数を削減していくことを考えていかないといけない時期だと感じています。

全国の課題と、WIDEの事業展開について

全国的な問題だと思うのですが、佐賀を拠点として活動されていく中で、今後どういうことをしていきたい、といったことなどもお話いただけると嬉しいです。

今のところ、活動範囲を広げたいという気持ちにはなっていません。今は、もっと狭く地域をみていかなければならないんじゃないか、という課題意識のほうが強いです。地域が違えば実態があまりにも違いすぎるので。

本末転倒かもしれませんが、sukusupoというマッチングサービスで解決することすら間違いだったんじゃないかと思うこともあります。指導者の問題だけじゃなかったり。

先日、隣の市の教育委員会に行ったら、中学校の数、子どもの数、文化など、本当に違うんですよね。1つ1つの市町をまずは回って、様々なパターンをインプットして、それがパターンとして成立するようになったら少しずつ範囲を広げる、というイメージです。

マッチングサービス自体が違うかもしれない、というのはすごい発言ですね。サービスの運営としての側面と、ハンズオンで行政や学校と関わっていくという側面のバランスが難しそうに感じます。

どちらの側面も持ち合わせているのですが、sukusupoは部活動があって、そこに未経験の先生が一定数いるというのが前提だったので、部活動という体をとったままそこに地域の人材を入れていくというモデルにはマッチします。

ただ、学校から部活動そのものをなくして、新しく民間団体でスポーツチームを立ち上げてそこに入ればという考え方もあります。この場合はマッチングサービスだと難しく、「WIDEスポーツクラブ」のようなものをフランチャイズ展開することの方がマッチする可能性はありそうだなと感じています。

人員の地域移行と、チーム自体の地域移行というパターンがあるんですね。なるほど。このあたりも議論されるべきことなのかもしれませんね。

どちらもメリット・デメリットがあるので、自治体によって考え方が変わりますね。

最後に今後の事業展開について教えてください!

部活と外部指導者のマッチングプラットフォームとして成長させていくということ、部活の課題を深掘りして寄り添ったサービスにできるように変化を恐れないということ。

そして、仲が良い同級生で作った会社なので、この4人が仲良く暮らしていけるように、会社をしっかり守っていくということを頑張っていきたいと思います。

とても興味深いお話をありがとうございました!

〜第31回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜

WIDEの北原誠大さんに部活動の課題などについて、お話をお伺いしました。
「部活動の地域移行」といったニュースでも目にするようなテーマでしたが、指導者の地域移行なのか、チームの地域移行なのかなど、地域によっての状況が異なるため、解決方法もシンプルに考えること自体が難しい問題なのだということを実感できました。加えて、僕は保護者視点で考えてしまいますが、子ども、教員、自治体、地域など、どの視点から考えるかによっても、問題の認識や解決策が異なるということも感じ、多面的な視点で考える必要性もとても勉強になりました。

また、WIDEという会社の成り立ちから、北原さんが「誰と働くか」ということをとても大切にされていることが伝わってきまして、こういったチームだからこそ、複雑な問題にも温かみを持って切り込んでいけるのだろうと感じました。今後の展開を今まで以上に応援しております!