【いろいろtv_#33】ルリーロ福岡の挑戦!スポーツ振興と地域活性の現実!

いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社 代表の青木が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。

第33回目は、ゲストにラグビーチーム『ルリーロ福岡』の島川大輝さんをお迎えして、チームの成り立ちや、スポーツを通じた地域活性など、いろいろおはなしをお聞きしました!

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目次

花園を夢見続けて13年。その後30歳で社会人に

本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いできますでしょうか。

ラグビーチーム「ルリーロ福岡」の代表を務めております島川大輝です。よろしくお願いします。

兵庫県出身で、阪神大震災の影響もあり高校、大学は関東に行きました。さきほど、ちらっと小林さんのプロフィールに蕨市出身とありましたが、私はその隣の川口市に引っ越しました。そこで高校、大学の時期を過ごし、お仕事を期に福岡に移動しました。

ラグビーは埼玉県の浦和高校に通っているときから始めました。高校ラグビーで花園に行くということだけを考えていた残念な学生が、そのまま残念な大人になったという感じですね。結局、20代はずっとニートでした。ろくに仕事をすることなくグランドに行く日々でした。

大学のときも高校ラグビーが好きでコーチをしていました。13年間ですね。それで、ついに花園に行くんですよ。念願かなって、当時の目標を達成したときに、「じゃあそろそろ働くか。」ということになりました。

この経緯ってみなさん知っているのですか?

ずっと言っています。360度どこから見てもニートだと思います(笑)

30歳になって、初めて働き始めたんです。東京で、福岡の女性の税理士先生と出会ったことがきっかけでした。「あんたみたいなバカはうちで働きなさい」って言ってくださいまして。福岡なんか行ったこともないし、知り合いもいないのに、ノリと勢いで福岡に来ました。それが10年前です。

そこからラグビーボールを捨て、電卓と友だちになったのですが、やっぱりラグビーボールを持ちたくなって今に至る、という感じです。

ルリーロ福岡の立ち上げ

ルリーロは2022年に立ち上げられたんですよね?

そうですね。2022年4月に立ち上げました。思い付いたのは2021年の2月です。なので、構想1年ちょっとです。

思い付いたというのは、何を思い付いたんですか?

トップチームを作ったらいいじゃーん!って、思い付きました(笑)

浮羽究真館高等学校という県立高校が福岡県うきは市にあり、税理士法人勤務時、その高校のラグビー部の監督に出会いました。吉瀬晋太郎(きちぜしんたろう)先生というのですが、彼は熱い眼差しで「日本一になるっす!」って言うんですよ。すごい熱い方がいるなぁと。

仕事せなあかんねやモードに入っていた僕ですが、忘れかけていた熱い想いが蘇ったんですよ。その熱い眼差しを見て(笑)

吉瀬先生と会うため、グラウンドに足を運ぶようになり、2021年2月くらいに、コーチになってと言われました。当時は、日本一になるチームの指導なんてとてもじゃないけどできないよ、と伝えたのですが、どうしてもとおっしゃっていただいたので、引き受けることにしました。

吉瀬先生の指導力もあり、強豪ひしめく福岡県の中でもだんだんと勝てるようになり、県内でもベスト8、ベスト4と上がっていきました。そうすると生徒がスポーツ推薦で関東や関西の大学に行き始めるんです。

浮羽究真館高等学校は全校生徒が約350人、1学年100人超です。1学年が100人をきると廃校というような噂も聞こえてくるような状態です。ちなみにこういう学校で、ラグビー部員、何人いると思います?

70〜80とかですか?

そこまでは多くないですが、58人いたんです。文化祭も体育祭も地域のボランティアもラグビー部員が盛り上げるという学校だったんです。

先生の熱量をもとに集まった子たちが、進学を機に浮羽を出ていく。これは地方あるあるだとは思うのですが、ラグビーのトップチームを作ったら、大人になって戻ってきてくれる、なんてことがあるんじゃないかと思ったんです。ラグビーバカの一員として、彼らが帰ってこられる居場所づくりができたらいいんじゃないかと感じ、やりましょうよ!と吉瀬先生に話をしたのがきっかけですね。

チームも何もない状態からトップチームを作ろう、というのがきっかけなんですね!

その時の温度感は10年とか20年とか時間をかけて、ちょっとずつ強くなるというイメージを持っていました。

ただ、たまたま、福岡県で有名な2つのクラブが廃部ということがあり、その選手たちが集まってくれたことで、プロジェクトが加速しました。

チームの立ち上げって最初はどんなことをするんですか?

「作ります」って言い続けました。

思い付いたときは、田舎の広大な土のグラウンドで、山が見えて、2両編成の電車が通って、冷たい風が吹く、というような状態です。何にもないんです。チームを作るということは、人が来るということで、生活をするということです。なので、就職先はあるのか、生活はできるのか、という話になります。

当時の仮説としては、地域は人手不足で悩んでいるだろうから、地域の企業とのマッチングがベースだろうと考えていました。やってみたら、想像以上に地域は人手不足に悩んでいました。

現在は結果的に48人の部員が集まり、30社近くの地域企業に務めながらラグビーをしています。

うきは工業団地という企業誘致をしている場所があります。県内でも大企業誘致のきらびやかなニュースが出ますが、そうした地域で起こっていることは、「うちの企業からそっちに行ってしまった」「引き抜かれた」といった、パイの取り合いのようなことだったりします。いかに外から人を連れてくるか、というところに課題があったりする状態でした。

ラグビーは15人、チームを立ち上げるには、日々の練習の環境なども考えるともっと人数が必要だと思いますが、どのように進んでいったんですか?

2022年4月12日の最初の練習では3人でした。

日を追うごとに、4人目が来た、5人目が来た、と増えてくるんです。構想は約1年前でしたので、実は、選手からの問い合わせは、結構きていて、入団見込みの選手が20人くらいいました。確定ではないけれど、5月入団、6月入団、という選手が実はいまして、なので、私の中では自信がありましたね。

とはいえ、目の前にいるのは3人だけでしたので最初は不安がありましたね。

問い合わせがあったら、企業と相談して職場を用意する、というような動きなんですかね。

そうですね。経済産業省の地域の人事部という補助事業に採択されていまして、こういった事業を人材紹介や派遣会社がやるのではなくて、プロスポーツチームがやるというのが珍しいからおもしろいと応援してもらえています。

自治体、うきは市商工会、浮羽究真館高校、ルリーロの4者間の連携協定を結ぶことで、ぐっと距離を縮めました。

こうしたことは島川さんが構想されているんですか?

勘でやってます(笑)

地域にとってのルリーロ福岡

選手のみなさんは、うきは市などに移住してくるんですか?

移住してきますよ。うきは市からは移住補助金が出ます。家賃の半額を補助してもらえるので、とてもありがたい制度ですね。

もともと家賃も高くないエリアですし、都心部に比べるとだいぶ生活しやすいと思います。

選手の年齢層はどのような構成なのでしょうか?

20〜35歳くらいです。平均すると27歳くらいですかね。最年長選手は45歳です。

僕も45歳です。

じゃあやりましょうよ。青木さんデカいんで。

いやいや、190センチあっても体力が、、、(笑)年齢を重ねた選手は家庭を持たれている選手もいらっしゃると思うのですが、ラグビーを!という感じなんですか?

そうですね。ラグビーをやりたい人ばかりです。自分もそうでしたが、アルバイトで生活しながらも、ラグビーをしたい人はいるものです。

プレーを続けられる場に集ってくるものなんですね。48人というのはラグビーチームとしては多いのですか?少ないのですか?

ようやく、普通のチームだなと思われるくらいの人数ですね。

15人でやるスポーツですから、ゲームをする時は15対15ですし、怪我の多いスポーツなので、もう1チーム分いたほうがと考えると45人は必要です。

ただ、実業団タイプのチームではないので、選手の人数=人件費ではないんです。なので、チームに所属する人数というのはある意味無限に増やせるんです。

これからチャレンジしたいこととしては、大人のアカデミーという形でトップチーム以外の選手が活躍する場も増やしていきたいです。続けていれば、そういうチームで所属して頑張れるという、ありそうでない場を作りたいと思っています。今は、海外でチャレンジする選手もいますが、国内でもそういう環境を作れたらと思ってます。

トップチームとして上へ上へ、リーグワンへ、という部分と、地域の人たちとラグビーをしていくというような部分を併せ持つということですね。

そうですね。私の気持ちとしても、やっていきたい部分です。

トップチームじゃなくても社会人でラグビーをしたい、という場合はプレーできる場はあるものなんですか?

私も所属していましたが、いわゆる草野球や草サッカーのような、クラブチームはあります。全国各地にありますので、所属してプレーすること自体は可能です。

ただ、クラブチームの場合は、クラブ選手権優勝、というゴールまでしかないんです。

リーグワンを目指す、という道とは違うんです。否定するつもりはないのですが、もっと道がつながっていく必要があるとも思います。

なるほど。移住についての話に戻ってしまいますが、地域の人から見たら、大柄な人がどんどんくるわけじゃないですか。これってどう見えているんですか?

そうだといいな〜という思いも含めてですが、良い声の方がよく聞こえてきます。

あ、それこそ昨日ですかね。重い荷物で困っていたご年配の方が、助けてもらったのがルリーロの選手だった、というXへの投稿なんかもありましたね。だいぶ拡散されていたりしましたね。 地域の声としても、スーパーで会って子どもに声かけてもらえた、握手してもらえた、というようなお話も出たりしますね。

そういうのを聞くと嬉しいです!

初年度の公式戦は8試合しかなかったので、地域のイベントには積極的に参加していて、地元との密着度を高めていきました。地域イベントは120以上出てたりしましたね。とことんやろう、って。そのペースは今も全然変わってないです。

地域のお祭りって、実は後継者に悩んでいたりで、できなくなっているケースも多かったりします。花火大会だって、コロナで中止になったことでホッとした運営側の人とかもいたりします。担い手がいなくなっている中で、ルリーロの選手が一緒にやる。重たいものを持つ設営なんかもがっつりやる、というのでコミュニケーションをとっているので、ウェルカムな人が多いですね。

ただ、悪い話もあります。

聞いていいんですか?悪い話。

朝早くコンビニに行ったら選手に睨まれた、とかはありましたね。

みんなショックを受けて、誰や誰や?ってなりました。そしたら、「たぶん僕です」っていう選手が出てきまして。

寝起きの顔が怖いと言われることが多いからと。確かに一重の選手ですし、大柄ですしね。

多分僕ですけど、絶対睨んでません、って。だから、「どんまい!!!」って(笑)

それだけ距離が近い、ということですよね(笑)街の人たちはルリーロの戦績を気にしていたりしますか?

勝てば、「おめでとう」というような声をかけてもらうこともだんだん増えてきましたね。

「今週は最終戦ですね」と声をかけてくれる人もいますし、「惜しかったね」「悔しいね」というお声もいただきます。本当に見てくださっているんだ、と、驚きと感動があります。

みんなで作るスローガンも、「We are LeRIRO」に決まったんです。私たちは、という表現をされたんですよね。

こちらが思っている気持ちが伝わったということが本当に嬉しかったですね。

地域としては、ラグビーが盛んな地域だったんですか?

盛んではないけれど、ラグビーが息づいている地域みたいなものはあります。決して唐突ではなかったです。

地域には浮羽ヤングラガーズ、隣の久留米にもチームがありました。以前は社会人チームもあり、大人向けのサークルもありましたね。そういった方々がラグビーの種を蒔いていたんです。30年前に浮羽ヤングラガーズができた時の立ち上げメンバーが吉瀬先生のお父さま、選手として吉瀬先生がいました。

その後、吉瀬先生は、京都産業大や住友林業株式会社でラグビーをプレーしたというストーリーがあるんです。その吉瀬先生が、浮羽でラグビーを教えたくなり、教員の資格をとって戻ってきた、という奇跡みたいな話なんです。

自治体と話をする場合でも、浮羽高校のラグビー部だった、どこどこでラグビーやってたんだ、という人たちも多く、その人達からの力強いサポートもいただけました。これは浮羽に限らない話かもしれませんが、企業の経営者にラグビー経験者は結構いるものでした。

応援できるものがあるというのは日常が楽しいですよね!スポーツチームが地域にあることで貢献できること、やってきて良かったことなどをお聞きしてもいいでしょうか。

スポーツチーム目線で、達成感があるかと言われたら無いです。僕の性格的にもあんまり満足しないというのがあるんで、もっともっと!と思ってしまいますね。もっと身近に感じてもらいたいし、もっと応援してもらいたいし、もっとルリーロ一色にしたいと思います。

やってきて良かったと思えることはたくさんあります!

水害などの多い地域なのですが、前回の水害の時に選手たちが自分たちから練習を止めて、災害ボランティアをやろうと言うことになりました。それが自分たちの存在意義だと選手が口にしていたりすると、痺れます。

重機が入らない狭いスペースでも、ルリーロの選手がスコップ持ってガッシャンガッシャンやるんです。1日仕事で大変ですよ、と言って割り振られるんですが、選手たちがやると、瞬間的に終わるんですよね。重機より早い。それで喜んでもらえたりすると、やはりめちゃくちゃ嬉しいじゃないですか。だから選手たちも明るく笑いながらやるんです。災害でどよーんとなっている空気も、選手が楽しく作業をすると変わるんですよね。

「週末にパチンコに行くんだ!」って言ってたおじいちゃんも、「週末はパチンコはやめて、ルリーロの応援に行くんだ!」って言ってました(笑)

そうやってファンって増えていくのかもしれないですね。

そうかもしれませんね。

学生にとってのルリーロ福岡

浮羽究真館高校にとって、ルリーロの設立はどんな影響があるのでしょうか?

ルリーロの選手が仕事が終わったら、ぞろぞろとグラウンドに来て高校生に直接指導する、という機会があります。この日は誰が行くと担当を決めて行っています。

今が旬の選手たちに直接指導をしてもらえて、技術的な面も精神的な面も学ぶことは多いのではないでしょうか。

コーチだと現役時代とは時間差もあったり、鮮度も落ちたりということがありますが、現役プレイヤーと常に接することができるというのはうらやましい環境だな、と思います。

選手としても、学生と接することができるのは嬉しい環境なのでしょうか?

嬉しいと思いますよ。高校生たちも、ルリーロに誰が入団するのか、というのを楽しみにしていたりしていて、一緒に写真撮ってください!と声をかけられることもあります。良い光景だなと思います。

女子マネージャーも喜んでいたりするみたいで、あの選手かっこいいー!って言ってたりするみたいですね(笑)

そういう環境って他のチームや地域にはあるものですか?

さすがに、高校生に毎日、しかも同じ場所にいるというのはなかなか無いんじゃないですかね。

ルリーロができてから、高校生の競技レベルは変わりましたか?

明らかに上がってます。単純なコーチングだけでなく、試合形式でルリーロと高校生でやることもあります。高校生では感じ得ないフィジカルの差を感じるはずですし、すごい経験だと思います。

コーチと選手の関係だと1対多が普通で、コーチが複数いる高校は多くないと思います。

野球で言えば、ピッチャー経験者がいれば、ピッチングは教えてもらえますが、それ以外は適切に教えてもらえない、ということもあったりするかと思います。

なので、ルリーロの場合を野球で例えたら、ピッチングコーチが5人いて、他のポジションのコーチもそれぞれ5人くらいいる、みたいな環境でしょうか。

そうすると、高校生もいろんな意見を知れるんです。なんというか、セカンドオピニオン的な。どういう価値観があって、どんなプレースタイルが良いのかを考えられるようになると思います。

まずは「打倒!東福岡高校!」という感じなんですかね。

吉瀬先生は、「打倒!東福岡!なので、試合してください!」って東福岡高校に行くような監督です(笑)

福岡に住んでいる人間としては、東福岡に勝つシーンを想像したら、感動して泣いちゃいそうです。他の高校とは違う体制で本気でやるからこそ起きる何かがありそうですね。

それを叶えるためのモデルでもあります。

ルリーロ福岡のこれから

リーグワンを目指して、3つあるディビジョンのトップを目指していくというのがルリーロの方向性でしょうか?

集まってきた選手たちがトップ思考なので、それに対しての考えはブレなくなりました。

私がトップ選手ではなかったので、トップ思考は強くなかったと思いますが、選手たちからいろいろ学びました。

こういう選手たちがいるなら、トップを目指さないかんな、と思いますね。

ラグビーリーグも、1つ1つのディビジョンを上がっていく、という流れなんですかね。

そうです。Jリーグとかと同じですね。

チームが強くなればなるほど選手も集まってくると思いますが、トップのチームとの差はどれくらいあるものなんですか?

選手としては、通用するプレーや瞬間瞬間感じることがあるので、いつでもやれる、いける、と思っていると思います。

ルリーロの今後について、教えてください!

まずは今期の最終戦で勝つことですし、リーグワン参入です。それを一緒に喜べる日が来たら良いなと思っています。

青木さんも応援してください。

選手じゃなくて良いんですよね?(笑)

選手登録しておきます。190cmの選手が入ったぞ、と(笑)

いやいや…(笑)今後のチームと島川さんのご活躍を応援しています!本日はありがとうございました!

〜第33回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜

ルリーロ福岡の島川さんをゲストにルリーロ福岡の立ち上げの様子などをお聞きした2024年1回目の『いろいろTV』でした。

ラグビーというスポーツが地域の外から人を集め、地域の人たちと集まった人たちの関係ができ、地域がチームをもっと応援するという、映画のような話が現実に進んでいるんだなと感じるお話を聞くことができました(僕が映画監督ができたら、映画にしたいなと)。

後日談として、視聴者の方に浮羽高校のラグビー部の出身の方がいらっしゃり、応援しているというお話もお聞きでき、島川さんが言われていた「ラグビーが息づいている地域」という言葉を実感できました。

今後のルリーロ福岡の躍進を楽しみにしております!