いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社 代表の青木が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。
第35回目は、ゲストに起業家の愛宕翔太さんをお迎えして、渡米の経緯や思い、寿司を通した活動や今後のキャリアについてなど、いろいろおはなしをお聞きしました!
目次
純ドメがサンフランシスコで味わう三重苦
こんにちは。今日は寿司感がない服なのと、サンフランシスコは今は夜なので、夜感のあるテンションですが、よろしくお願いします。
愛宕と言います。寿司イベントをやっていることもあり、友だちからは「大将」と呼ばれます。
「大将」って英語でも呼びやすいんですよね。僕はファーストネームが翔太なのですが、翔太だと「ショーダ」「ショーダー」とか、イントネーションがばらつくんですけど、大将はバラつかないんですよね。今日は青木さんも小林さんも「大将」って呼んでください。
僕は元々人材系のITの企業を10年経営していて、その企業を上場企業に売却して、サンフランシスコにMBA留学しています。寿司は社長を辞めたあとに暇になったので、趣味でやっています。
せっかくだから他で話をしていないことをしましょうか。日本がどう見えるかという話はどうでしょう。
僕は、約35年間、いわゆる純ドメ(純ドメスティック)と呼ばれる、国内から出て生活をしたことのない人で、会社を売却した後に勉強をして、アメリカで英語も学んでいる人だという状況で、出身は長崎なので東京の人ではないです。だから、客観的に日本を見たことがなかったのですが、日本から出てみると日本は意外とめちゃくちゃいい国だなということを思っています。円安だとか、ドイツにGDP抜かれたとか、いろいろ言われますが、キレイだし、食事はおいしいし、みんな優しいし、結論としていい国だと思えて、それをちゃんと伝えたいという気持ちがあります。
サンフランシスコにいると物価が3倍なんで、なんか意味分かんないんですよ(笑)。生活の質を落として、3倍のお金を払いながら、不自由な英語で暮らしていて、、、もう三重苦みたいなことしてますよ(笑)
マウントを取りたいわけじゃないんですが(笑)、東京大学に入学をして卒業をしているという事実がありますので、受験英語は突破しているという前提はあります。ただ、あれで話せるようになるかと言ったら、全くの別問題なんですよ。大学3年生の時に初めてシリコンバレーに行ったんです。そしたら、本当に何を言っているか全く分からなくて。そういうスタートラインですから、今も苦労しています。日本人の誰もが苦労するんじゃないですかね。
寿司もキャリア1年なんですが、英語はまだ9ヶ月なんですけど、まぁ一応コミュニケーションが取れるくらいにはなってます。大将、どれだけ喋れるんだ、と思う人にはYoutubeで公開してますのでそちらを見ていただければと。
AI時代ですし、DeepLもあるので、正直、読むと書くという技術は必要性を強くは感じないです。翻訳かければ、わかることをわざわざ頑張る必要はないですし、僕は一応大学の専攻は経済学で経営のゼミにも入っていましたので、あのときやってたな、という内容が多いです。だから内容がわからないという苦労はあまりないですね。
そうなんです。
でも、何がわからないかと言えば、日本語で覚えてきちゃっているので、英語の単語がわからないんです。あ〜なんとなくあのへんの内容だろうなということはわかるのですが、英語で初見で聞くと何のことか分からないことはあります。
英語の習得といった時にどういった対象についての話かということは幅広いです。なので、僕が考える英語学習は、必要なところだけやるという手抜きの学習法です。僕は起業家なので、事業をやるうえで必要な英語だけ身につければ良い、例えば契約書は翻訳機にかけながら理解すれば良いと思ってます。
翻訳機にかけたら日本語と英語が画面上に並ぶわけじゃないですか。それで、知らない英単語が出てきたら1個1個ある程度覚えていけば良いかなと。なので、読む、書くということは特に問題はないと思っています。
ただ、「話す」や「聞く」力については、価値があると感じています。
こちらだとビジネスネットワーキングにはLinkedInを使っていて、渡米したとき200人くらいだったつながりが、今は4,200人です。9ヶ月くらいで4,000人増ですね。喋って、仲良くなって、つながる、という流れを週100人くらいやり続けているので、「話せること」と「聞けること」には価値があると感じています。
僕はそう思います。
また、「話す」と「聞く」は密接につながっていると感じています。僕らが受けてきた日本の英語教育の一番やばいところでもあると思うのですが、正しい音で覚えていないと正しく発話できないし、正しく聞けないんですよ。
正しい発音はしっかり学習する必要があります。正しい発音がわかってくると、相手が言っていることを理解できる確率が上がります。友だちとの会話なら、その中でわからない言葉があれば、それを教えてもらうということを繰り返していけば、どんどん理解できる確率が上がっていきます。
無意識に英語を勉強できる年齢ってあるんですよね。正確なファクトを忘れてしまいましたが。だんだん歳を重ねると理屈で覚えないといけなくなるんです。だから早くからやったほうが楽だとは思います。
ただ、インドや英語圏ではないヨーロッパからアメリカに来ている友だちもいますが、そもそも大前提として、その国の中で英語がある程度できる人が来ていることにはなるので、英語ができる人たちがたくさん集まってきた、という状況になります。そうすると、劣等感を感じるということはあるものです。地域で頭がいいと言われて東京大学に来たけど、東京大学の中では下の方だ、というような感じですね。この環境下で、日本人は圧倒的に英語が下手なんですよね。
だから、ポジティブに考えると、日本人で英語が聞けて話せるというのは圧倒的なバリューなんですよね。それだけで、重宝されたりしますし。
日本の良いところ、活かせる経験
まず、街がきれいなんです、街全体が。
例えば、サンフランシスコでは、道端にゴミが普通に落ちていたり、建物の作りが雑で窓の建付けが悪かったりします。安全という意味でも、街中に薬物をやっている人なんかもいます。
日本には、24時間営業しているコンビニがあって、常に明るくてコンビニが交番みたいな役割も果たしているわけじゃないですか。あんなのはあり得ないんです。コンビニはこっちにもありますが、基本的に24時間営業じゃないですし、あってもガソリンスタンドに併設しているというくらいの頻度でしかありません。サラダをはじめとした生鮮食品や冷凍食品がたくさん並んでいるということもないです。このあたりは日本が良いなと思うところですね。
友だちからは、良くも悪くもユニークな国だと言われます。「いただきます!」とか他の国では言わないですし。
一方で、日本のもっとよくできるよな、ということにも気づいたりします。
単一的なカルチャーですかね、良くも悪くも。
基本的にはみんな同じような見た目だし、同じような生まれ育ちです。サンフランシスコだとアジア系が4割、メキシコ系、その他、とダイバーシティがあるわけです。
ダイバーシティが行き過ぎても大変ではあります。意思統一することのコストが高くなります。なので、わかりやすいお金といった基準でしか意思決定できないこともあります。
ただ、あまりにもダイバーシティがないというのも、他の国の人から見たときにその国のルールの良し悪しの評価が分かれるわけです。
独自OSのPCみたいな、そんな感覚です。独自ルールが過ぎると他の国から孤立してしまう可能性もあります。
ビジネス的にはUberがなんであんなに入ってこれないのか、良くも悪くも規制やルールがあったり。
社会保険はアメイジングです。こっちで病院に行くと、保険対象になっている病院にしか行けないので、ただでさえ体調悪い時に病院を探さないといけない、とかあります。対象の病院以外に行くと冷たくあしらわれたりしますし(笑)。
良い面も悪い面もあるということを感じることができます。
今はアメリカで学生をしていて、アメリカでビジネスを実際にやっていない、という状態なので偉そうなことは言えませんが、こちらのベンチャーキャピタリストのコミュニティなどに参加したことで見えてきたことは、顧客が変わるので欲しがるものが全然変わるだろうとは感じています。
例えば、寿司といえば日本は握り寿司ですが、アメリカではロールです。そういう違いはあります。
ロジスティクスも違います。国土が広いので、コールドチェーンなどは日本とは全然違いますね。コンビニや宅急便のロジスティック網は、日本の奇跡だと感じてます。アメリカは国土が広すぎるので小口配送は成り立たないんです。送料が大きくなりすぎます。
冷凍食品を途中で外に出してて溶けちゃいました、みたいなことも普通に起こるんですよね(笑)だから、トレーダージョーズやホールフーズやセーフウェイなどのスーパーにすっごく大きなフローズンコーナーを作って、そこに買いに来る、という形になります。そういう違いはあります。
一方で、変わらないところもあると思ってます。
セールスフォースを考えてもらうと良いのですが、営業の手順、ディールフローと呼ばれる考え方はそこまで変わらないです。数字の追い方などの考え方は変わらないですし、僕自身が人材ビジネスでやってきたディールフローは活かせるなと感じています。
ベンチャー投資やM&Aもディールフローで管理できますし、基本的にディールフローの考え方が使えます。なので、僕はディールフローの考え方で戦える場所で命をかけようと思っています。日本人じゃなくてアメリカ人に売れるものを考えるけど、ディールフローで戦うということは変えないです。
大将の今後の展望
わかりやすいところでいうと、アメリカ人に売れるような冷凍寿司を開発していたりします。
以前からフードビジネスをやりたいと話をしていますが、なぜフードビジネスなのかというと、今までやってきた人材ビジネスは国ごとに事情もルールも違います。労働法も違いますし、だから、国を超えるための敷居が高いです。
そう考えたときに、フードはおもしろいと思っています。誰もが言ってますが、外国に行ってから日本に戻ってくると日本のご飯は美味しいと感じます。あのクオリティのものがあの値段で出てくるというのは、もはや奇跡だと思いますね。ただ、人口が減ることが見えている国で、しかもなかなか国内の給料は上がらないことを考えると価格転嫁はできないんです。
日本のラーメン、例えば一風堂はこっちだと3,000円なんです、昨日も食べましたが。味は同じなんです。3倍で売れるんです。アメリカでやるということは3倍で売れるということなんです。
また、僕はもともとITの分野で戦っていましたが、ITや金融のルールはそもそもアメリカで作られています。金融はアメリカの東側、ITはアメリカの西側です。ルールメイクしている人たちが集まっているところがあるのに勝負することはきついです。タイムマシン経営のような孫さんや三木谷さんがやってきたことは、とても素晴らしいですが、今の時代ではできないと感じています。
ドルが稼げて儲かりそうで、日本から来ていることがプラスに働く分野はフードだろうなと感じています。
そのあたりは冷静に受け止めていて、僕が寿司屋をやります!といっても成功しないと思っています。なぜなら、僕はtoCで仕事をしてきた人間ではないので。
僕はBtoBでフードをやると決めています。例えば、魚をアメリカの飲食店に卸すとか、そういうことですね。冷凍寿司を作って、法人に売る、とかです。
じゃないと、必殺のディールフローが使えないので。
ラーメンも寿司もおもしろいですし、フードの保存料の工夫なんかもおもしろですし、世界的に見たときのSDGsの切り口からのフードの定義なんかもおもしろいんじゃないかなと。あるスタートアップはノンアルコールビールもアルコールをそんなに飲まない世代にビールを再定義していますし。食は口に直接入るので、日本人の細やかな品質管理が生きてくる部分だなとは思っていますね。
それから、僕が気をつけていることは、自分が美味しいと思うからこれにしよう!と決めることはしないようにしようと思っています。
サイゼリヤの社長さんが書かれた本で、「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」という本があるのですが、その考え方が素敵だなと感じています。日本人に売るわけではないので、アメリカ人が「良い!」って言うならそれも寿司でいいじゃないか、という考え方。これが多様性の大事なところだと思うんです。
俺らはこうだから!とやってしまうと受け入れられないです。その人たちが良いと言ってくれてお金も落としてくれるのなら、やってみても良いと思うんです。
あとは、英語での販路開拓に苦労している経営者もたくさんいることがわかったので、BtoBの営業として動けたら人の役にも立てるし、ある特定のフードの領域だったら世界一も見えるかなとも思ってます。
日本だけでなく、アジアのフードをBtoBの経路を作って持っていくっていうのをみんなで楽しくやりたいんです!「みんなで世界一になる!」と言っているんですが、「みんなで」というのはそういうことなんですよね。。
冷凍コンテナとか、空輸とかいろんなルートがあって、こんな会社があるんだ〜!って思ったりしてます。ITで在庫を持たない商売をしてきたので、寿司を通して遊び心を持ちながら学ばせてもらってますが、変数は増えるな、大変だなぁとは思ってます。
大将の考える「多様性」とビジネス
ソニーの創業者の盛田昭夫さんを尊敬して、盛田さんの人生年表を参考にしていまして、盛田さんは32歳でアメリカに行かれていて、僕は3年ビハインドしててちょっと焦っています。
商売の基本である、仕入れた金額よりも付加価値をつけて売る、というところで勝負するしかないんだろうなと思ってます。日本は良い国ですが、なぜそうなったかといえば、儲けてくれた先人がいるからですね。稲盛さん、本田さん、盛田さんなどですね。でもちょっと事例が古過ぎると感じ、僕はちょっと恥ずかしいなと思います。先人の方々が良いものを残してくれた財産を食い潰してきただけに思えてしまいます。
ただ、彼らがやれたんだから、僕らにもできることはあるんじゃないかと思うんです。今の時代で勝率が高そうなところはあると思うので、チャレンジはしよう、と思っています。
競合となる国というよりは、アジアの他の国もパートナーとして見ています。ヘルシーな寿司のあとはヘルシーなフォーとかカレーでも良いと思いますし、アジアのフードは米からできてるから仲間、という気持ちがあります。
相手の国の食べ物を食べてみようって時には、仲が良くないとなかなか食べようとならないじゃないですか。だから、僕が言っている「みんな」というのはもうちょっと広いんです。日本人だけではないです。
関わる人がみんなwin-win-winになるようにしないといけないので、なかなか難しいことだとは思いますし、長く時間はかかると思います。
これは1回目の起業のときの失敗からそう考えるようになりました。業績が伸びたのは事実と解釈を分けるという作業をしたことがきっかけです。
絶対これは行けると思う!という根拠のないことで大して儲からないということがありました。なんでうまくいかないんだろうと考えると、自分が欲しいものが相手が欲しいものだとは限らないという当たり前のことだったんです。買ってくれたという事実をしっかり見て、それに合わせて動いたら成功した、という極めて単純な話だったんです。
日本人が良い!といったけど、それは外国人にとってはわかんないよ、ということもあります。
顧客も日本人に閉じない多様性、従業員も日本人に閉じない多様性、日本に住む人も日本人に閉じない多様性、というのがたぶんつながっていると思うんです。
それが世界の中にいる日本、というのにつながると思うんですよね。
言ってることとやってることが違う、というのはまずいので、多様性と言うからにはちゃんとやらないとなと感じています。
〜第35回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜
大将をゲストに「日本がどう見えるか」というお話をお聞きした2024年2回目の『いろいろTV』でした。
大将の話は、前提や事実や解釈をわけて話をされるので、非常にわかりやすく、さっそくその後の提案の際にまねさせてもらいました(笑)。
また、BtoBのディールフローという切り口、自分が欲しいものが相手が欲しいものだとは限らないという当たり前のこと、多様性の捉え方など、日々の思考に良いインプットをいただけました。
「みんなで世界一になる!」活動での大将の活躍を楽しみにしております!