いろいろ社の「いろいろTV」はいろいろ社 社長の青木が気になる人に、いろいろなおはなしをお聞きするオンライン番組です。
第21回目は、ゲストに元福岡市議会議員の田中しんすけさんをお迎えして、市議会議員のお仕事についていろいろおはなしをお聞きしました!
目次
同期で同年齢のふたり
みなさま、こんばんは。田中しんすけと申します。
前福岡市議会議員で、直近では、昨年11月の福岡市長選挙に立候補しまして、結果としては蛮勇を振るう形になりまして、今は無職です。笑
生まれは鹿児島で、両親の仕事の都合でいろいろと転々とし、3歳のときに福岡市にきました。それ以来ずっと福岡で、地元の小中高大を出ています。大学で就職活動をして、金融機関に内定をもらっていたのですが、卒業のための単位が足りずに留年した、という苦い過去もあります。大学にあまり行っていなかったということもあり、アカデミックなものにちゃんと触れたいと考えて、大学卒業後は大学院に進学しました。
政治家としては、中央区の平尾に事務所を構えたのがスタートで、2007年に福岡市議会議員となり、15年と5ヶ月、1期4年なので期数としては4期、活動してきました。議員としての活動については後ほどお話させてください。
議員になる前は、アクセンチュアという会社で働いておりました。青木さんはよくご存知の会社ですね。笑 アクセンチュアでは、当時は官公庁本部という部署で、文系卒だったのですが、データベースのお守りをしていました。
共通の知人がいて、一緒に焼き鳥を食べたのを覚えています。実は青木さんは私の母校である西高宮小学校のお近くにお住まいとのことで。
市議会議員というよりも政治家という枠で考えていまして、昔から政治には興味がありました。もともとを振り返ると、中学校時代に生徒会長をやったのがきっかけかもしれません。生徒会長をやりたいとなった時、立候補者が3人いて、選挙になったんです。それが初めての選挙活動、選挙の経験でした。
そこで当選をし、生徒会長になり、学校の校則などを含めた中学校全体の改革をしようという思いに燃えてやったのがきっかけですね。
もともと、政治家になりたいなという思いがあったのですが、当時はどうやったら政治家にたどり着けるのか、という情報があまりにも少なくて。
当時の私は大学院の政治学研究科に属していたのですが、進路を決める際に実際に政治家の方と話をする機会がありまして、民間に行くべきか議員の秘書などからスタートすべきかを相談しました。その時にビジネスや事業の経験を積むことが将来的な財産になるし、そちらのほうが面白いかもしれないよ、というアドバイスをもらいました。その時に、あ〜、そういうものなのか、と思い、まずは民間企業に就職したという経緯です。
アクセンチュア時代の仕事のあり方と、市議会議員としての仕事のあり方はかなりギャップがありました。ショッキングなこともいろいろありましたし、ギャップは感じましたね。ただ、アクセンチュア時代が突き抜けていたということもありますので。笑
市議会議員のおしごと
市議会議員の仕事の中身としては大まかに分けて議員活動、政治活動、地域活動の3つかなと思っています。誰も定義していないので、私は独自に定義しています。
イメージをしやすくするために福岡市のお話を少しします。
政治家といえば国会議員、国会などの様子を想像すると思うのですが、国会と地方議会はルールが違います。市長と市議会はどちらも選挙で選ばれ、福岡市は市議会議員は62人が定数で、この62人で1つの決定を下す、というのが議会の特徴です。
市長や市役所は、市長がトップで市長が決めればそれで決まるのですが、市議会は多数派を形成しないと自身の思い通りの決定にはならない、という違いがあります。
今まさに、明日から新年度予算を福岡市と議論する議会が始まります。
いやいや、元同僚たちが忙しいんです。笑
予算や条例を市長が提案し、1ヶ月位かけて市議会が、その内容は問題ないのかを議論するということになります。1年の中で1番ホットな時期だったりしますね。これは福岡市だけではなく、全国の地方自治体で行われようとしていることなので、それぞれのご地元で自分の身近な議会が何をやっているのだろうというのを見てみるとイメージが湧きやすいと思います。
今お話したことが議会活動の一端なのですが、先ほどお話したとおり、市議会議員の活動としては議会活動、政治活動、地域活動があり、それぞれが影響しあっています。
例えば、地域活動で地域で拾った市民の声を議会で発言して変えていこう、あるいは、議会活動での取組の成果を政治活動の場で広報しよう、といった感じで関連しています。それぞれについてしっかりやっていかなければならないのが地方議員だと私は思っています。
もう少しそれぞれの活動を説明させてもらいます。
まず、議会活動についてです。簡単に言うと議会活動は政策提案と政策/予算等のチェックです。先ほどお話しした明日からの議会では市長から提案された予算の可否を決断することになり、これはチェックですね。 もう一方では、政策を作ることができるという部分もあります。市民の声を受けて、福岡市だけで適用される新しいルールを作ろうということができます。これは条例と言いますが、それを提案できる権限があります。
3月、6月、9月、12月と3の倍数の月に定例議会を開催しています。
その他の活動として、社会科特別授業というのがあります。小学生に対して、議会に来てもらって市議会議員の仕事を経験してもらおうということを4年前から始めました。ただ、始めた矢先にコロナ禍になってしまったので、ちょっと形は変わってしまいましたが、お申込みも多く倍率も高い人気の取り組みになっています。
また、議会活動報告会という会もあります。政治家が何をやっているかということを報告する会です。これらが議会活動になります。
2つ目は政治活動です。
政治活動は政治に対する敷居を下げるための活動だと私は考えています。例えば、今日のように『いろいろTV』に出演するということもそうですし、政策の中身や議会や政治家の実態を知ってもらうための取り組みなどもいくつかあります。
具体的な例としては、後援会活動です。後援会は私を支えて応援してくれる人たちですが、その方たちに話をするとか、一緒にボーリングをするとか、食事会をするといったことも含めて、自分の思いや取り組みを伝えるというものです。
その他には、政党活動という活動もあります。私は議員になった時は民主党で、現在は立憲民主党に所属しています。政党活動では政策をPRするなどの活動を行っており、その手法が街頭演説などです。耳を傾けていただくと、意外とホットなことを話していたりもしますので、もし機会があれば、耳を傾けてほしいです。
最後に議員インターンです。議員になった当初から、大学生を事務所に受け入れて、議員の仕事を知ってもらう、政策を立案してもらう、といったことをやっています。以前はみんなとキャンプに行ったりなどもしていました。
最後は地域活動です。日々の活動の原動力となります。私は地域活動あってこその議会活動だと思っています。
具体的には自治会や町内会など、地域のつながりを強めるための活動、それから夏祭なども地域が主体となって運営しています。私は町内会長もしていますし、地域サークルなどもあり、この写真はソフトバレーボール部ですが、こういったことも15年以上続けています。
その他には、商店街の運営や消防団員、同窓会活動にも積極的に参加し、役をいただいていたりもします。 こうしたつながりの中で、福岡市政の問題や課題についての声が聞こえることが多くあり、それを元に議会の場で発言し、変えていく、ということを意識しています。
それぞれの活動があってこそ、福岡市政を少しでもよくしていくための行動ができると私は考えています。
地域活動は議会活動のためのインプットの場ではありますが、地域活動自体もアウトプットの場でもあります。例えば、私は恋活、婚活なんかを商店街とやったこともありますが、地域も盛り上がったり、商店の売上が上がったりということもあります。地域活動はそういう点がおもしろく、やりがいにつながっています。
究極的には、何をしないといけないのかと問われると、必ずやらないといけないのは議会活動ですね。議会に出席して、議論に参加して、イエスかノーかを意思表示する、というのがマストです。
ただ予算といってもですね、福岡の場合は1兆円規模になるんです。10万円〜50万円の政策から、数十億円、数百億円単位の政策まで、さまざまな数字の積み上げで1兆円になっています。そうすると、1兆円を1つ1つつぶさにみて、賛成、反対というのを見るのはなかなか大変です。
議会で大枠についてを問います。その後、常任委員会という5つの分科会形式の場に分かれて、それぞれ詳細の議論をしていきます。総務財政、教育子供、経済全般、高齢者福祉、インフラ関連に分かれて、詳細審議をしていきます。
各議員が常任委員会でスペシャリティを発揮して、○なのか✗なのかを議論する、という流れになります。
スタートは、やはりもともとの自分のキャリアに関連するところですね。そこを基礎にしながら、どの委員会に入りたいかを決めていくことになります。
私のように15年間やっていると、教育子育てに興味はあるものの、街づくりや経済活性化にも興味があり、全て網羅的に知りたいなという欲求が出てきます。そのため毎回違う委員会に所属していました。4期やると、4つの委員会でそれぞれ違う分野が見れて、福岡市の全体像が見えてきます。
だから、当初は自分の興味関心の高い分野からスタートすることが多く、1つの委員会を貫く議員と、様々なものを経験される議員にわかれます。
政策立案はですね、公式ではないですが実は議会の中に条例を検討する会議というか、委員会などがあります。国会で言えば政党がありますが、そういう枠組みが福岡市にもあって、それぞれを会派、パーティーといっていますが、そのそれぞれが勉強会を定期的にやっていて、その中でこういうことを扱ったほうが良いんじゃないか、という議論が定期的に行われて、1年くらいかけて、固めていく感じです。
その通りです。おそらく、圧倒的に市役所から提案される条例の方が多いです。条例というのは幅が広くて、本当に今までの市民の暮らしのあり方を変えるような新規の決まりごとから、国の法律改正に伴って、その文言の修正だけのようなものまでいろいろあります。
その中で議会が提案するものは、今の暮らしを大きく変えるような条例が多いですね。
そうですそうです。
会派によって問題意識も違いますし、うちとしてはこういう状況を変えるためにこんな条例を新しく作りたい、といったことを議論すると、それは大事だけどこっちのほうが大事だ、だとか、いや、うちはちょっとその意見ではない、というような反対意見もあり、そのなかで生き残った案が提案されていくということになります。
市長は市長として決定権を持っていますが、議会はそれぞれの議員の思惑や会派の考え方があって、なかなかそこでものを形作るという、いわゆる合意形成はすごく大変です。提案をしていても、調整した結果、50%や60%まで意図が反映された内容のもので生み出せた、という感じになります。
民間事業の中でも根は同じですよね。ただ、企業の場合は利益を上げましょうという揺るぎない大前提があり、わかりやすいですしマインドの近い方が集まることになると思うので、決断がしやすい面もあると思います。ただ、議会の場合、背景がかなり異なりますので、妥協点を見出すところから始まることも多いです。そういう意味で、時間がかかりますね。
軸も増えますし、どの軸を判断するためのものにするかもみんなバラバラです。
政治家のキャリア
それが我々も課題意識になっています。それが明確にわかっていたら、我々は選挙で選ばれますので、選挙のための明確な一つの比較軸になります。数値で示せたり、といったことにもつながりますし、良いなと思っているのですが、それがバラバラなのです。
私は、議会で何をやってきたか、どういうことを動かしてきたかという実績を見てもらいたいもので、そこを強調します。もう一方で、福岡の現状をとらえて、こういう課題があるからこうしないといけない、という将来の姿や取り組みを見せるということも大切だと感じています。
ただ、選挙で投票する要因はそれだけではないと思います。
名前を知っているから、というような要素もあります。なので、名前を知ってもらうために、街頭に立って朝の挨拶をして、チラシを配って、というようなことも必要です。そういうこともやっていかないといけません。
どうしても、定性的な物語になりやすいです。数字で示せる定量的なものはなかなかないことが多く、できる限り定量的なことを含みつつ、定性的なことをお伝えし、選挙で審判を受ける、ということになります。4年という年限の中で、次の選挙でお伝えできる実績も意識しなければならないことも特徴ですね。
私の場合は未来構想ですね。何をしたいのかが明確に語れているかどうかです。
私は市長選挙での立候補で力を入れたことは未来のビジョンです。福岡は元気に見えますが、実は課題に直面していると。人口の減少や生まれる人よりもなくなる人の方が多くなっているだとか。それに影響して生じる歪には備えないといけませんし、経済構造も変えていかないと、ハッピーな人とアンハッピーな人の差がどんどん開く。それを変えていきましょうと。将来、こうすれば変えられるというところのアピールに力をいれました。
市議会でみなさんが投票に行くときも、その候補者が未来をどう見ているか、というところに注目してもらったら良いと思います。
こうすべき、という話は、現状の課題を把握していないと出てこないものです。政治はひとりひとりの幸せの土台作りです。何をしようとしているかは問うてみてほしいなと思います。
それは、最初はどうしても期待になりますよね。期待してみて、結果がどうだったかを最低4年間見ないとわからないです。私は4期やっていましたが、現職は実績が問われ、新人は夢が問われます。ただ、私は実績だけではなくて、常に夢を語って、新人と同じ気持ちでやっています。
変わるというよりは、より鮮明に見えるという感じですね。4期やったので、今だったら福岡市の全体像について語って、それを理解した上で、こうすればもっと良くなる、というのを言えるようになったと思っています。
それには時間もかかりました。15年かけて、認められるかは別として、言えるようになった、ということが市長選に出た大きなきっかけですかね。
それも積年の課題です。私の場合、市長選挙に落ちた瞬間、正確に言うと市議会議員をやめたタイミングから無職になってしまいます。
市長選挙に当選すれば、職に就くことができますが、そうでない場合は考えなければなりません。
一方で、政治家をやっているといろんなことに触れられるわけですね。いろんな職種やいろんな分野、興味関心は広がります。教育でも民間事業でも、地域を盛り上げる仕事でも、特定の分野での商品開発をやってみたいという気持ちもあります。
ただ、そもそも、自分のキャリアがズバッとこの瞬間に切られたときに、何ができるのかと認識されるかがわからないですね。
何もしてこなかったわけではないので、どうやって言語化すればいいのか、むしろ、そういう言語化ができる何かが作れたら全国の市議会議員の助けになったりもするのかなと、今の身になって考えさせられます。
転職エージェントに、今の私が依頼したら、どういうところが強みとして打ち出されるのか聞いてみたかったりしますね。
今終わってみて、議案の提案のお話もネタとしてはおもしろかったんじゃないか、具体的に話せばよかった、と思ってます。体育館を広くする問題とカラス問題という自分の中で秀逸なものがありまして。具体的に何を提案したか、というやつですね。ぜひ、その具体例も機会があれば、また。
〜第21回目の「いろいろTV」を終えた青木の振り返り〜
2022/2/22の第1回目の放送からあっという間に1年が経ちました。いつも視聴いただき、ありがとうございます!
今回は田中しんすけさんをゲストに市議会議員のおしごとについて、いろいろお聞きしました。
議会活動、政治活動、地域活動という活動の大枠のお話、議会活動の具体的な内容をお聞きでき、市議会議員のおしごとって、こういうことをされているんだと勉強になりました。イメージしていたところと合っていた内容もあれば、言われてみればという内容もあり、大人の社会科見学シリーズは僕が1番楽しませてもらっています。笑
また、議員の方を自身がどのように判断するかという視点は、転職エージェントの話も含め、とても興味深い内容でした。
具体的な議案の提案のお話という更に突っ込んだネタも提供いただき、次回、改めて、田中さんにお話をお聞きできることがとても楽しみです!